Ferguson Shooting: Reconciliation with Protesting Citizens

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米黒人青年射殺 問われる国民の融和

米国で黒人青年を射殺した白人警官が不起訴となり、黒人らが抗議を激化させている。今なお残る差別と格差。その解消こそ、米国初の黒人大統領オバマ氏が、全力で取り組むべき課題だ。

 ミズーリ州ファーガソンで八月九日、黒人青年=当時(18)=が白人警官に射殺された。警察は暴行された警官の正当防衛と説明。大陪審は今月二十四日、警官の主張を認め不起訴処分とした。これに反発する抗議行動が全米各地に拡大、一部が暴徒化した。

 黒人らが怒りを募らせたのは大陪審の構成が白人九人、黒人三人と人種的に偏っていたためだ。黒人住民が三分の二を占めるファーガソンの警官五十三人中、黒人は三人だけだったことが警官と黒人住民との対立構図を際立たせ、警官だった担当検事の父親が黒人に殺された過去も疑念を呼んだ。

 怒りの背景にあるのは差別への強い不満だ。米国での黒人の人口比率は13%。一八六三年に奴隷解放が宣言され、五十年前に選挙、教育、雇用などでの人種差別撤廃を定めた公民権法が制定されたが、差別や格差はなくならない。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、服役経験者の割合は黒人男性では3%、白人男性が0・5%、親が服役中の子どもが黒人では十五人に一人だったのに対し、白人では百十一人に一人と、人種による犯罪率の高さに大きな差があった。犯罪につながるような格差をなくすことが急務だ。

 発砲した白人警官は米テレビのインタビューに、ズボンとベルトの間に手を突っ込み近づいてきた黒人青年が武器を持っていると思い身の危険を感じた、と話している。相手が銃を所持していると思い発砲-事件は銃社会の問題も浮き彫りにした。黒人のホルダー司法長官は連邦政府としても捜査を進めていることを明らかにした。

 人種間の融和を訴え圧倒的な支持で当選したオバマ大統領だが、人種問題で目立った成果はない。今月の中間選挙では上下両院とも野党共和党が過半数を制し、政策の手詰まり感、社会の分断は進むばかりだ。国連人権高等弁務官は声明で、米国では警官と衝突して死亡する黒人が多いことなどを指摘、人種問題が司法に及ぼす影響を調査するよう求めるなど、米国社会のありようには国際的にも疑問の声が上がっている。

 「初の黒人大統領」の意義を色あせさせないためにも、残り任期の二年間、国民の融和のため本腰を入れるべきではないか。

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