Riots in Missouri, USA: Put an End to Discrimination

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<社説>米ミズーリ州暴動 差別との決別へ全精力を

2014年11月27日

 米中西部ミズーリ州ファーガソンで丸腰の黒人青年を射殺した白人警察官が不起訴となったことをきっかけに、暴動が発生した。

 抗議は全米各地に広がっている。不起訴決定に対する反発の強さがうかがえるが、市民生活を脅かす暴力的行動はもちろん許されない。関係当局ほか国連なども自制を呼び掛けている。混乱が一日も早く収束するよう望みたい。

 事件と騒動は、米社会が抱える人種対立の深い闇をあらためて浮かび上がらせた。差別や格差の解消にどう本腰を入れるのか。世界のリーダーを自任する大国の動向を各国が注視している。オバマ大統領と米国はそのことを強く自覚すべきであろう。

 黒人青年の射殺事件が起きたのはことし8月。事件直後も激しい抗議行動があり、住民と警官隊が衝突し、略奪行為などの混乱も起きた。今回再び抗議行動が発生したことは、地元州当局や警察などの支配層に対する黒人社会の根深い不信が表れていると言えよう。

 ミズーリ州は白人が圧倒的多数を占めるが、人口約2万1千人のファーガソンは逆に住民の約3分の2が黒人だ。だが市長も市議の大半も白人が占め、一方で貧困者の大多数は黒人だ。警察もほぼ白人だけで、自動車を停止させて行う職務質問やその後の逮捕の9割は黒人に集中する。8月の事件後には、警察が戦場で使うような装甲車両を使い、重武装で住民を鎮圧したことでも批判を招いた。

 米国では南北戦争中の1863年にリンカーン大統領が奴隷解放を宣言してから150年がたつ。ことしは、黒人と白人の法的な平等を定めた公民権法の成立から50年の節目にも当たる。だが人種差別問題は依然解決されない。

 今回の暴動をオバマ大統領は「弁解の余地はない」と非難した一方、背景には警察官らから対等に扱われていると実感できない黒人らの「胸のつかえ」があるとの認識を示した。大統領として慎重に言葉を選んだのだろう。ただ騒動の背景には、オバマ氏の就任後も、差別や格差の解消が前進していないという黒人社会の失望を指摘する声もある。

 人種問題との決別に向け、オバマ氏は残り約2年の任期で全精力を注ぎ込んでほしい。中間選挙で敗北したオバマ氏にとっては、さらなる難題となろうが、その道筋を示すことが黒人初の米大統領としての使命ではないか。

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