Praise for the Normalization of US-Cuba Relations

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<社説>米キューバ正常化 歴史的決断を評価する

2014年12月19日

 歴史に刻まれる大きな一歩だ。米国のオバマ大統領と隣国キューバのラウル・カストロ国家評議会議長が国交正常化交渉の開始を発表した。50年余にわたる両国の不毛な対立を思えば感慨深い。対立を乗り越えた両国首脳の歴史的な決断を高く評価したい。

 米国は渡航制限を緩和し、送金や輸出の制限などの制裁も緩和する。「テロ支援国家」の指定解除も検討し、数カ月以内にはキューバに大使館も設置する。カストロ氏は「オバマ氏の決断は敬意と感謝に値する」と演説した。オバマ氏が述べた通り「新たなスタート」になろう。

 米国はこれまでキューバを国際的に孤立させようとしてきた。だが目に見える効果はなかった。逆に同国の経済改革を後押しすることで共存共栄を図った方が得策、と判断したようだ。

 ローマ法王が両国首脳に関係改善を促す書簡を送り、対話の場を提供する「橋渡し」をしていたことも明らかになった。カナダ政府も水面下で交渉を仲介した。歴史的緊張緩和に大きく貢献したこの両者にも深く敬意を表したい。

 米国とキューバの対立は1959年のキューバ革命が発端だ。フィデル・カストロ政権は社会主義化を進め、米系資産を接収した。米国は61年1月に断交を通告。同年4月には反革命部隊を上陸させてクーデターを図ったが失敗した。

 62年に米国は全面禁輸を発動した。同年、ソ連がキューバにミサイル基地建設を計画、米国は配備を阻止しようと海上封鎖した。このキューバ危機こそ、世界が核戦争に最も近づいた瞬間とされる。

 その後、キューバはソ連から援助を受けたが、ソ連崩壊で途絶えた。だが自前の農業生産拡大や医療技術向上などで物資不足を乗り越え、今や南北アメリカ随一の長寿国となった。古い街並みが残ったことで観光大国にもなっている。

 その基礎の上に米国との国交正常化だ。キューバ経済は飛躍的に成長しよう。隣国の発展は米経済にも好影響を与え、互恵関係が生じるのは間違いない。その意味でも両国首脳の決断は後世に評価されるはずだ。

 一方、米国内では共和党の強硬派が今回の決断を「キューバ圧政の勝利」「愚かな譲歩」と非難した。制裁緩和を妨害する動きもある。米議会は歴史の歯車を逆に回す愚行をやめ、冷戦の負の遺産の解消に協力してもらいたい。

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