映画で米朝対立
2014年12月27日
■緊張化避け対話解決目指せ■
北朝鮮の金正恩第1書記の暗殺計画を描いた米コメディー映画がインターネットで公開され、米国内で劇場上映が始まった。製作会社へのサイバー攻撃や映画館へのテロ予告によって、いったん上映中止が決まったが、オバマ米大統領は「表現の自由」を重視する立場から公開を求めていた。
オバマ氏は公開を歓迎したが、北朝鮮は強く反発し、米朝は対立を深めた。
米朝は一層の緊張化を避け、映画や北朝鮮の核、人権などの懸案について、対話解決を目指すべきだ。
■サイバー戦争の様相■
映画はソニーの米子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が製作した。米連邦捜査局(FBI)はSPEへのサイバー攻撃を北朝鮮の犯行と断定したが、北朝鮮は関与を否定。オバマ大統領はSPEの公開中止の判断を批判する一方、北朝鮮への対抗措置を取ると明言。その後、北朝鮮のインターネットが一時機能を停止し、米政府の報復の可能性も指摘された。
真相は不明ながらも米朝の「サイバー戦争」の様相を呈し、米議会では北朝鮮への制裁強化やテロ支援国家再指定を求める声が強まった。ただ、匿名で行われるハッカー攻撃や脅迫は極めて卑劣な行為だ。もし米朝当局の指示による秘密工作なら、直ちに停止すべきだ。
核開発をめぐっては、米朝と日韓中ロは2003年から08年まで6カ国協議を続けたが、北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返し、解決には至っていない。米国は08年10月にテロ支援国家指定を解除したが、核計画の検証方法で合意できず、肩すかしを食った。
金正恩体制始動後の12年2月、北朝鮮は米国からの食料支援と交換に核実験や長距離弾道ミサイル発射を一時停止することで合意したが、4月にはミサイルを発射し、合意破棄を表明した。
■拉致問題にも悪影響■
米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表は今月、日中韓を訪問し、6カ国協議の再開に向けた米朝対話に意欲を示した。米国は今回の映画の騒ぎで、対話への前向きな姿勢を変更するべきではない。
国連調査委員会は2月、北朝鮮の人権侵害を非難する報告書を公表。今月、国連総会は国際刑事裁判所への付託を検討するよう国連安全保障理事会に促す決議を採択した。北朝鮮は国際社会からの批判に耳を傾けるべきだ。
日朝は日本人拉致被害者について再調査に合意し、北朝鮮の特別調査委員会が調査を進めている。北朝鮮の孤立は調査に悪影響を及ぼす恐れもあり、日本政府は慎重な対応が必要だ。
米国は宿敵だった社会主義国キューバとの国交正常化に乗り出す。北朝鮮にも融和的な対応を取ってほしい。
北朝鮮も譲歩と強硬姿勢を繰り返す瀬戸際外交をやめ、国際社会と協調し、対話のテーブルに戻るべきだ。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.