Let’s Finish the TPP Negotiations Quickly, and Help Evolve Global Trade

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通商秩序の進化へTPPの早期決着を

2015/1/16付

 経済は生き物である。技術や輸送手段、ビジネスモデル、消費の潮流は常に進化し、ヒト、モノ、カネが国境を越えるグローバル化の流れは、好き嫌いにかかわらず止められない。変化する経済の実情に合わせて、通商秩序の枠組みも進化しなければならない。

 世界を網羅する自由貿易の制度を築いた世界貿易機関(WTO)が発足して20年がたつ。その下での国際標準のルールが、貿易自由化と世界経済の成長に果たした役割は計り知れない。

 だが、今ではWTO協定の内容は時代遅れになりつつあり、国際法としての弱点が目立つようになった。他国を顧みず自国の利益だけを優先する通商政策や、現行協定では規制できない不公正な商取引が横行している現実がある。

 今こそルールを更新し、通商秩序を再構築すべき時だ。残念ながら、世界から約150もの国や地域が参加するWTOの交渉は動きが遅い。当面は有志国が中心となって協議する自由貿易協定(FTA)の網を広げていくしかない。

 その中で最も意欲的な目標を掲げるのが、日米が軸となる環太平洋経済連携協定(TPP)の構想である。知的財産権や投資、競争政策、政府調達、サービスなど、WTO協定の弱点を補い、21世紀型の通商ルールのひな型となる可能性がある。新たな秩序づくりを主導する日米の責任は重い。

 その意志を共有するはずの日米が、昔ながらの関税をめぐる協議でもたついているのは情けない。世界経済の大局を見据えて、経済大国として指導力を発揮してほしい。日米2国間の協議を早く決着させ、漂流の気配も漂うTPP全体の交渉に弾みをつけるべきだ。

 日本とオーストラリアの2国間の貿易協定が正式発効した。7年以上を費やす難交渉だったが、安倍政権と豪アボット政権が果敢に国内の反対勢力を抑え、合意に到達できた。通商交渉は政治指導者の決断で決まるという成功例だ。

 一方、今週都内で開く日中韓3カ国の交渉は、これまで大きな進展は見られなかった。経済規模が大きい日中韓の自由化は極めて重要だが、合意への強い意志が、どの国からも感じられない。緊張感が緩んでしまった一つの要因は、TPP交渉の長期化である。

 TPPが形になれば、日中韓を含めた他の通商交渉も加速するだろう。新たな通商の歴史を開けるか、今こそが正念場である。

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