米金融規制は再点検のときだ
2015/1/23付
リーマン・ショック後に世界各国で導入された金融規制に行きすぎはないのだろうか。そんな問題を投げかける動きが米国で起きている。米保険大手メットライフが厳しい規制を見直すよう連邦地裁に提訴した。
争点となっているのは、当局が巨大銀行を「金融システムを安定させる上で重要な金融機関(SIFI)」と認定し、特に厳しい監督下に置く規制だ。具体的には自己資本の積み増しを求めたり、自社株買いなどの財務戦略を制限したりする。
すでに、米国を代表する銀行や証券会社がこの規制の対象となっている。メットライフは2014年12月に対象となったが、この判断を不服とした。
金融危機の際に複雑な取引をしていた米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は、公的資金で救済された。規制当局はメットライフがAIGと並ぶ保険大手である点を重視したとされる。
これに対してメットライフは、同社の金融派生商品の取引がAIGのようには多くなく、仮に破綻しても金融システムに深刻な影響を与える可能性は低い、と主張しているもようだ。
もともとSIFI規制は銀行が念頭にあった。その対象を広げ、金融危機の再発防止に向け念には念を入れるというのが最近の傾向だ。しかし、預金を融資に回し信用創造をする銀行の規制を、預金業務のない保険会社に当てはめることへの批判は強い。
今回の問題に限らず、金融全般への規制が厳しすぎると産業に必要な資金が回りにくくなるとの指摘がある。このため実施が延期されたルールもある。メットライフの提訴が、米金融規制の中身をていねいに点検しなおす契機となることを期待したい。
金融規制は各国で強化の方向にある。それが経済に与える影響などを日本も改めて検証し、世界の金融監督者の集まりなどの場で情報を発信すべきだ。
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