【主張】
ウクライナ東部 対露圧力強め流血阻止を
ウクライナ東部で、同国政府との停戦合意を破って、親ロシア派武装勢力が攻勢を強め、再び戦火が広がっている。
プーチン露政権が親露派を後押ししているのは明らかである。欧米など国際社会は、制裁を中心に対露圧力を一段と強化し、一刻も早くこの軍事介入と流血の拡大を食い止めなければならない。
北大西洋条約機構(NATO)によると、親露派側に流入する兵器が増大し、ロシアからの援軍とされる兵員も9千に上るとウクライナ政府はみている。
親露派勢力に制圧された港町マリウポリでは、砲撃により民間人30人以上が死亡した。国連のフェルトマン政治局長は欧州安保協力機構(OSCE)監視団の報告として、「砲弾は親露派支配地から発射され、戦闘と関係ない場所が攻撃された」と述べた。
民間人を意図的に狙ったとすれば、絶対に許されない。
マリウポリは黒海の北のアゾフ海に面し、ロシアが武力併合したクリミア半島とロシア本土を陸路で結ぶ要衝だ。そこを親露派の支配下に置きクリミアの「孤島化」を避けることが、今回の作戦の目標の一つともいわれる。
クリミアをウクライナ領の旧状に復するよう求める国際社会に対し、武力でもぎ取ったものは手放さないというプーチン氏の意思を示しているともいえる。決して認めるわけにはいかない。
昨春来の東部の戦闘で死者はすでに5千人を超えた。犠牲者をこれ以上増やさないためにも、親露派と後ろ盾のプーチン政権は停戦合意に立ち返るべきだろう。
ロシア経済は制裁と収入の柱である原油価格の下落で悪化した。プーチン氏が軍事介入を、苦境から国民の目をそらす手段と考えているなら大きな間違いである。
欧州連合(EU)は臨時の外相理事会を開き、在欧資産を凍結する露政権と親露派の対象者を拡大することを決めた。オバマ米大統領も一般教書演説で、対露強硬姿勢の維持を表明している。
米国にはさらなる実効性ある制裁を発動し、ウクライナへの支援強化も検討してもらいたい。
日本も先進7カ国(G7)の一員として対露圧力とウクライナ支援で応分の責任を果たすべきだ。プーチン大統領の年内訪日にこだわるあまり、国際的な対露結束の足並みを乱してはなるまい。
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