TPP決着へ米政権と議会は調整急げ
2015/3/3付
米オバマ政権が主導してきた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が、米国の国内政治に振り回されている。議会が通商交渉権限を大統領に与える法案をめぐり、政権と議会の意見調整が手間取っているからだ。米政権が交渉権限を持たないままでは、交渉は最終的な合意には至らない。
交渉に参加した12カ国による協議は大詰め段階に入っている。大きな対立点は知的財産権など一部の分野を残すだけとなった。すでに着地点は見えている。米国以外の交渉国は米議会の動きを横目に見ながら、交渉の速度を微調整しているようにもみえる。
米国憲法の定めでは、外国と通商交渉をする権限は連邦議会が握っている。とはいえ議会が直接に外国と交渉するわけにはいかないため、立法措置で権限を大統領に与え、大統領の指示の下で米通商代表部(USTR)が外国政府との交渉を担う、という仕組みになっている。
昨年11月の中間選挙の結果、米議会の多数派は野党の共和党が握った。伝統的に共和党は自由貿易への志向が強いが、保守派の草の根運動「茶会」(ティーパーティー)系には、自由貿易に懐疑的な議員も少なくない。
一方、大統領の身内である民主党は保護主義の中核である労働組合が支持基盤で、もともと自由貿易に反対論が強い。
異なる意見をぶつけ合い自由闊達に議論するのは、民主主義の原則ではある。ただ、通商交渉権限の法案をめぐる審議の行方が見通しにくいのは、必ずしも貿易・投資をめぐる政策論争が高まっているからではない。
法案審議を「人質」に通商と無関係の要求を出す議員もいれば、半ば感情的にオバマ政権への権限付与を嫌う勢力もいる。
世界の自由貿易をけん引してきた米国の政界が、明日の通商秩序をどう築くかという大局観ある政策論ではなく、小粒の政治取引に明け暮れているのは残念だ。ただ、地元への利益誘導に傾くのは政治家の常でもある。議員との個別交渉を含め、大統領の政治手腕が問われる局面だろう。
日本をはじめTPP交渉参加国は、米国が求める高い自由化水準を達成しようと国内で努力してきた。そのうえで米議会での通商交渉権限法案の成立を待っている。今こそオバマ政権は、議会の説得に情熱と気骨を見せてほしい。
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