<社説>翁長知事内外会見 歴史に根差す反転攻勢だ
2015年5月22日 6:02
沖縄の民意をないがしろにし、新たな米軍基地を抱え込ませようとする日米両政府に対し、歴史に根差した本格的な反転攻勢をかける-という宣言に聞こえた。翁長雄志知事の強い気概が時折怒気をも込めて発する言葉に宿っていた。
その矛先は、名護市辺野古の新基地受け入れを当然の落としどころのように見なし、沖縄と安倍政権の対立構図ばかりを取り上げる国内メディアにも、沖縄の苦しみに無関心な本土の国民にも向けられていよう。
東京の日本記者クラブと日本外国特派員協会で記者会見した翁長雄志知事は、民意を押しつぶして米軍基地が築かれた戦後の不条理の連鎖をひもといた。歴史を冷徹に見据え、日本政府の沖縄への差別的処遇は正義に反し、将来の日米関係と日本の未来を危うくするという普遍的な訴えだった。
訪米要請行動を控えた時期に、名護市辺野古への新基地建設を不退転の決意で阻む姿勢を国内外の報道機関に直接伝えたのは、米国世論もにらんだ戦略的動きである。
日本記者クラブには238人、特派員協会には約150人が詰め掛けた。世界的な通信社である米国のAP通信や英国のロイターなどが記事を配信し、多くの国外メディアが報じた意義は大きい。
知事選などで明確に示された民意を無視し、新基地建設を強行する日本は民主主義国家として異常ではないのかという問い掛けは説得力を持って響いたはずだ。
菅義偉官房長官、安倍晋三首相、中谷元・防衛相と相次いで会談してきた知事は鍵となる言葉を幾つも用意し、周到に臨んできた。
この日も「(新基地建設は)海上での銃剣とブルドーザーの基地建設だ」「日米同盟や安保が大切と言えるのは自ら負担しないからだ」などの象徴的な言葉を紡いだ。
沖縄を冷淡に見据えて何ができるのかと問う国内メディアの質問に知事はいら立った。「独立論に行き着くのでは」と問われると、「沖縄が切羽詰まっているのに、切り離しますか。先々切り離されるのではとの恐怖さえある」と言い切った。
緊迫感が漂ったが、それでも沖縄の毅然(きぜん)たる意思を直接示したことは今後につながる。自らの運命を自ら決められない沖縄の歴史に終止符を打つ決意を示した知事に対し、保守政界のエースだったからいつか政府に妥協すると見立てを持つ記者はいなくなっただろう。
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