Extended Diet Session: Starting Anew on Security Bills

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政府と与党は、24日までの今通常国会の会期を大幅に延長する方向で調整に入った。安全保障関連法案の成立を確実にするためだ。

 安倍晋三政権は当初、関連法案を衆院特別委員会で80時間以上審議し、24日までに衆院を通過させ、8月初めまで延長した国会で成立させる日程を描いていた。

 しかし、安倍首相のやじ問題などで特別委が何度も中断し、審議時間は確保されていない。さらに衆院憲法審査会で参考人の憲法学者3人がそろって「法案は憲法違反」と指摘したことで、国民の法案への疑念が深まり、大幅延長が必要と判断したようだ。

 安倍政権は、法案成立の戦術として、維新の党との連携に狙いを定めたとみられる。自民、公明の与党だけで突き進むのではなく、修正協議を通じて維新の党を取り込み、強行採決の印象を薄めようという狙いなのだろう。

 安全保障以外の重要法案も審議中であり、一定の会期延長はやむを得ない面がある。また「安保法案への理解を深めるためにも、会期を延長して審議する」という主張も成り立つかもしれない。

 しかし、「集団的自衛権の行使容認は違憲」という憲法学者たちからの批判は、一連の安保法制の根幹部分に関わっている。安倍政権が集団的自衛権の行使をあきらめ、法案を全面的に書き換えない限り、「違憲」の評価を「合憲」に変えるのは難しい。多少の修正でクリアできる問題ではない。

 安倍首相が今国会での安全保障法案成立にこだわるのは、4月の米議会での演説で「この夏までに必ず実現させる」と約束したからではないか。国民の理解よりも「対米公約」を優先しているのだとすれば、本末転倒である。

 安全保障法案成立ありきの会期大幅延長は必要ない。ましてや「数の力」で強行採決を繰り返して早期成立を目指すのは論外だ。

 安倍政権は「法案は憲法違反」との指摘に謙虚に耳を傾け、国会を閉じていったん廃案にした上で、憲法論議からじっくりやり直すべきではないか。

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