Iran Nuclear Deal: Toward Trustworthy Fulfillment Without Regressing

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イラン核合意 後戻りなき着実な履行を

 核開発問題の解決に向けたイランと欧米など6カ国の協議が最終合意に達した。イランが極秘裏に建設した核施設の存在が発覚してから13年、粘り強く外交交渉を重ねた末に妥協点を見いだした“歴史的成果”を歓迎したい。

 主な合意内容は、ウラン濃縮などイランの核開発活動を10~15年制限する。国際原子力機関(IAEA)がイランによる措置の履行を確認すれば、欧米が核関連の経済制裁を解除・凍結する。違反すれば制裁を再発動する―など。欧米側としては、原子力発電用の限定的なウラン濃縮を一定程度認める一方で、国際的な監視下に置いて透明性を高める意図がうかがえる。

 交渉を引っ張ったのは、1979年のイラン革命後に国交を断絶した「宿敵」同士の米国とイランである。2013年にイランに穏健派のロウハニ政権が誕生し、一気に対話が動きだした。

 核開発疑惑は中東の緊張を高め、世界に不安な影を投げ掛けてきた。今回の合意は、中東で新たな核兵器保有国が誕生するリスクを長期間にわたって回避するものだ。しかも武力でなく、対話で実現したことは意義ある核不拡散の取り組みと評価できよう。

 大きな「外交遺産」を残したいオバマ米大統領と、国民を苦しめる経済制裁の解除を取り付けて国内での穏健路線の継続を確かにしたいロウハニ大統領。こうした双方の思惑の一致も、歴史的合意へと後押ししたのだろう。

 この成果は、ペルシャ湾岸の原油に依存する日本にとっても喜ばしい。エネルギーの安定供給や企業のイラン市場再参入などが期待されよう。

 今後の焦点は履行へと移るが、先行きは楽観できない。ネックになるのが、合意に懐疑的な勢力の動きである。

 合意内容について米議会で審査が行われるが、上下両院で多数を占める野党・共和党は不承認決議の可決を目指すという。来年11月の大統領選での政権奪還をにらんだもので、「イランに核保有の道を残した」などと批判し、オバマ政権をけん制している。

 オバマ氏は拒否権で対抗する構えだ。共和党が覆せるだけの票を集めるのは難しい見通しだが、制裁解除の手続きが遅れるなど混乱も予想される。そうなれば、イラン国内の強硬派が発言力を増して合意が崩壊する懸念もある。

 イランの勢力拡大を警戒するイスラエルやサウジアラビアも、「合意が守られないのではないか」と不信を募らせる。武力攻撃や核軍拡競争へ進む危うさも否めない。

 こうした問題を一つずつ打開していかなければ、歴史的合意も水泡に帰してしまう。イランは、合意を誠実に履行していくことでしか国際社会の信頼を得られないことをしっかり認識する必要がある。交渉に当たった6カ国は、立場を超えて検証と支援に力を尽くすよう求めたい。決して後戻りは許されない。

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