米軍ヘリ墜落 政府は毅然と向き合え
沖縄県うるま市の伊計島の沖合で、特殊部隊の訓練をしていた米陸軍ヘリコプターが米艦船への着艦に失敗し、甲板上に墜落した。死者はなかったが、乗員17人のうち、研修中の陸上自衛官2人を含む7人が重軽傷を負った。
今回は洋上の事故だったが、米軍機は県内の上空を頻繁に飛行している。もし市街地に墜落していれば、大勢の市民が巻き添えになるところだった。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題の集中協議で沖縄入りしていた菅義偉官房長官は「米側に迅速な情報提供と原因究明、再発防止策を政府として強く申し入れた」という。
だが、米軍がどれだけ誠実に応じるかは見通せない。オディエルノ陸軍参謀総長は「一つの出来事で過剰反応はしない。残念だが事故は時々起きる」と述べた。事故を軽視しているようにもとれ、軍事機密などを理由に情報を出し渋る可能性は否めない。
近海の事故なら、本来は日本側も状況や原因を調べるべきだが、今回も「日米地位協定」の壁に阻まれた形だ。
辺野古移設問題や橫田基地(東京都福生市など)へのオスプレイ配備計画をめぐり、米軍への風当たりは強まっている。
中でも沖縄は、在日米軍基地の7割以上が集中することへの不公平感を抱える。2004年に米海兵隊のヘリが沖縄国際大(宜野湾市)に墜落した事故で日本の警察が現場に一切立ち入れず、基地の外で凶悪事件を起こした米兵の身柄も引き渡されないなど、地位協定に長年苦しめられてきた。
米軍はこうした理不尽な現状に目を向け、事故が沖縄の基地問題だけでなく、日米同盟にも影響を及ぼしかねないと認識して対応すべきだ。
日本政府も、米軍の報告を待つだけの受け身では困る。
米国家安全保障局が欧州に続いて、日本政府などの電話回線も盗聴していた疑惑が発覚した際、安倍晋三首相の対応は、猛抗議したドイツやフランスの首脳に比べて手ぬるいと批判された。今回の事故も厳しく追及できないようでは、米国の言いなりで戦争に巻き込まれかねないという安全保障関連法案への国民の懸念も一層強まろう。
政府は米軍機事故を深刻に受け止め、毅然(きぜん)とした態度で米国と向き合う必要がある。「対等な日米関係」を言うなら、まずは不平等な日米地位協定の見直しこそ進めるべきだ。
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