Abandoning the Withdrawal of American Troops: How Should We Depict the Stability of Afghanistan?

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米軍撤退断念  アフガン安定どう描く

 米国のオバマ大統領が、2016年末までに予定していたアフガニスタン駐留米軍の完全撤退を断念した。約1万人の現在の駐留規模を維持し、16年末以降、約5500人に削減するという。

 イラクとアフガンの「二つの戦争」終結を、重要公約に掲げてきたオバマ政権にとって大きな政策転換となる。オバマ氏は17年1月に大統領の任期満了を迎えるが、アフガンの安定に向けてぎりぎりの努力を続ける必要がある。

 01年の「9・11」米中枢同時テロで、米国と北大西洋条約機構(NATO)はアフガンのタリバン政権を攻撃、崩壊させ、国連安全保障理事会の決議で、米軍を中心とした国際治安支援部隊(ISAF)が派遣された。

 その後、オバマ氏はブッシュ前政権が進めた武力介入を見直し、米軍の役割縮小を目指してきた。14年5月、アフガンから16年末までに完全に撤退する方針を表明。14年末にはISAFが戦闘任務を終了し、最大10万人を派遣してきた米軍は現在、約1万人の兵士を残し、アフガン軍の訓練や対テロ作戦の支援を行っている。

 ところが、アフガンでは治安情勢が悪化。9月に、反政府勢力タリバンが、北部の重要都市クンドゥズを制圧した。米軍支援を受けた政府軍が数日後に奪還したものの、新政府発足以来の失態で、米軍撤退計画も危ぶまれていた。

 さらに、奪還後も続く戦闘で、米軍は国際的な緊急医療援助団体「国境なき医師団」が開設した病院を誤って空爆。多数の死傷者を出し、アフガン政策の混迷ぶりを示す象徴的な出来事になった。

 数々のテロを起こしている過激派組織「イスラム国」も台頭しているという。

 11年に米軍が完全撤退したイラクでは、治安が悪化して「イスラム国」が勢力を拡大し、早すぎた撤退と国際社会の批判を浴びた。その二の舞いを避けるためのやむを得ない判断といえるだろう。

 アフガン政府やNATOは、歓迎の意向を表明しているが、アフガンの和平に新たな戦略があるわけではない。米国の次期大統領選でも重要な争点になる可能性は高い。

 武力による制圧は、結局、テロによる報復の連鎖を生み出し、その限界を露呈した。困難ではあるが、和平協議を実現し、対話を進めるしか道はあるまい。

 日本はこれまで、アフガンの復興事業や警察官の教育を支援してきた。国の未来を担う人材育成に地道に協力を続けたい。

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