G20首脳会合 テロの根源断つ努力を
パリの同時多発テロで、犯行グループの背後関係が徐々に明らかになってきた。自爆テロを起こした男はシリアの旅券を所持し、難民とともに欧州に入っていた。
当初からテロを起こす目的で人の波に紛れていたとしても不思議ではない。フランスに入国したテロリストが、過激な思想を持つ移民と結びついて犯行を起こした構図が浮かんでくる。
「イスラム国」は世界各国にテロを拡散させる戦略に転換したとされる。10月以降、関与が指摘される事件は、トルコの首都アンカラの大規模テロ、エジプトで起きたロシア機墜落など、それを裏付けるものばかりだ。
このままでは世界に混乱を招きかねない。テロは社会不安を起こすだけではない。人の往来を細くし、世界経済の不安要因にもなる。
テロ根絶のために国際社会は足並みをそろえられるか。トルコで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合は、その覚悟を問う場面となった。
その表れが、通常の首脳宣言とともに発表した対テロ声明だ。テロの未然防止のために「イスラム国」への資金源を遮断するほか、戦闘員の出入りを防ぐ国境管理の厳格化などで一致した。
しかし、国際社会は協調態勢をなかなか築けない。シリア内戦の政治的解決を目指す多国間外相級会議がウィーンで開かれたが、アサド政権の退陣が前提だとする欧米やサウジアラビアと、アサド政権を支援するロシアやイランが対立。ここでも足並みの乱れを露呈した。
それでも、半年以内に移行政権を樹立し、1年半以内に新憲法下で自由選挙を実施することで合意した。パリのテロで高まった危機感が合意を後押ししたのだろう。シリアの早期安定化に前進した形だが、予定通り進むかどうかは楽観できない。
「イスラム国」の台頭とテロ、難民問題の根源は結局、この地域の混乱だ。それを解決しなければ、各国がいくら水際対策を進めてもテロは根絶できない。この合意を着実に履行してほしい。日本も中東安定化のために貢献していきたい。
多くの移民を抱える欧米の国内対策も重要だ。文化的な摩擦で差別され、失業や貧困によって社会から疎外される移民も多い。
テロは決して正当化できないが、こうした「不満の芽」を野放しにしていれば、いつしか過激派組織と結びつく危険もある。
国際社会が情報を共有するなど連携してテロへの警戒を強めるのはもちろんだ。それ以上に、亀裂の入った社会をもう一度立て直すことが、テロに屈しない道になる。
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