The Sympathy Budget: Get Cracking on Overhaul Debates

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思いやり予算 見直しの論議を本腰で 12月21日(月)

 安倍晋三政権が安全保障面で米国との関係を深める中、見過ごせない問題がある。在日米軍の駐留経費を日本側が負担する「思いやり予算」だ。

 政府は先週、2016年度から5年間の負担について米政府と合意した。総額は9465億円に上る。11~15年度の9332億円を上回ることになった。

 日本は米軍と自衛隊の一体化を進める安保法制を整備した。財政事情も厳しい。大幅削減を求めていたのに実現しなかった。

 そもそも、米軍基地の管理・運用を定めた日米地位協定上、支払い義務はない。政府は国民に丁寧な説明もせずに、米国の要求に妥協し、受け入れてきた。

 筋が通らない予算措置を政府はいつまで続ける考えなのか。抜本的な見直しが必要だ。

 この予算の歴史は古い。1978年、当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりを持って対処する」と、基地労働者の福利費などを負担したのが始まりだ。今は従業員給与を主に、光熱水費、訓練移転費などに充てられている。

 導入時の額は62億円だったのが年々増え、99年度には2756億円まで膨らんだ。その後は減少に転じたものの、2015年度は1899億円に上った。

 当初は法的根拠がない日本側のサービスだった。87年度からは協定を結んでいる。いつの間にか日米両政府の間に思いやり予算はあって当然、との認識が定着してしまったようだ。それが交渉の壁となり、日本が主張しにくい状況を生んでいるように映る。

 減額を強く求め続ければ「日米同盟」関係に支障が出るといった日本側の不安感も、米国と正面から向き合うことを避ける要因になっているのではないか。

 今回の交渉は7月に始まった。アジア重視戦略を進める米国は日本に増額を要求して譲らなかった。米海軍横須賀基地へのイージス艦配備など、体制増強を理由にしたとされる。日本側は負担増を認めざるを得なくなった。

 思いやり予算は税負担に関わり、国民一人一人の問題である。日本の財政事情は今や先進国の中では最悪のレベルだ。なのに、政治はこの問題に深く切り込もうとはしてこなかった。

 一気に削減することが難しいとしても、日本の事情を米国にしっかり伝え、減額していく努力が欠かせない。今回の合意は来年3月末までの国会承認が必要になる。各党は見直しに向けた議論に本腰を入れてもらいたい。

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