米欧はシリア内戦終結に向け「間違った前提」見直せ 論説副委員長・村上大介
オバマ米大統領の任期最後となった一般教書演説には、拍子抜けさせられた。超大国である米国の大統領が示す今後1年の施政方針は、北朝鮮の核実験問題や国際ルールを無視した中国の海洋進出といったアジアの重要課題に一言も触れなかった。
さらに、外交面で唯一強調した「テロ対策」についても何ら具体策や展望を示さず、抽象論に終始したのは、どうしたものか。
昨年のパリ同時多発テロと手法が酷似するインドネシアの首都ジャカルタでの連続自爆テロなど、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の絡む事件が今年に入っても続いている。
「テロとの戦い」は各国共通の重要な課題であり、オバマ氏が「最優先課題」に挙げることを否定はしない。だが、各国との協調ばかりが強調され、米国のイニシアチブが示されたとは言いがたい。
共和党員ながら2期目のオバマ政権で短期間、国防長官を務めたヘーゲル氏は先週、ワシントンでの講演で、「米国はイラクのフセインやリビアのカダフィが唐突に排除された後を襲った混乱と無秩序から学ぶべきだった」と指摘した。
オバマ氏がシリア内戦の初期に同国のアサド大統領排除を公言したことについて「その後の米国の政策の手足を縛った」とも批判した。
内戦の泥沼化がIS伸長を許した要因であることは間違いないが、単にアサド政権を崩壊させても、それに続いたのは、さらなる混乱と、国際テロ組織アルカーイダ系のヌスラ戦線とISの「天下」だったろう。
アサド政権を排除しないからISを倒せないといった、米国でよく聞かれる議論は、まったく空回りしている。欧州でも同様だ。
ロシアはアサド政権にてこ入れし、中東での発言力を増している。残念ながら冷徹な読みが当たっているからだ。そもそも間違った前提に立ち、戦略を欠く米欧は、このままでは有効な処方箋は出せまい。
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