Japanese Sanctions on North Korea: Ensuring Enforcement with International Cooperation

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北朝鮮への独自制裁 国際連携で実効性確保を

 政府は核実験や事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、北朝鮮に対する独自制裁を強化した。韓国も独自制裁を打ち出し、米国でも手続きが進む。中国の消極姿勢を変えるためにも、日米韓が核・ミサイル開発阻止へ本気度を示すことは有効だろう。

 制裁強化に当たって、政府は北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射強行に対し、「わが国の安全に対する直接的かつ重大な脅威」「北東アジアや国際社会の平和と安全を損なうもの」として容認しない姿勢を表明した。

 その上で、北朝鮮籍者の入国禁止や送金禁止、全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止のほか、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止などを打ち出した。拉致被害者の再調査を決めた2014年の合意を受けた対話重視から圧力路線への転換である。

 北朝鮮は拉致協議では時間稼ぎが目立ち、真摯(しんし)に対応しなかった。核・ミサイル問題でも瀬戸際外交を繰り返しながら、陰で着実に進めようとする姿勢が明確になった。このままでは将来に重大な懸念を生じるのは必至だ。

 韓国が以前に取った「太陽政策」に代表される融和路線が、どのような結果を招くかを図らずも証明した形だ。

 日本の独自制裁と前後するように、韓国は南北の経済協力事業「開城(ケソン)工業団地」の全面中断に踏み切った。従業員に支払われる給与の一部が核・ミサイル開発に投入される懸念があるとみている。軍事費に利用される全ての道を閉じることは重要である。

 米議会は従来の独自制裁を大幅に強化し、核・ミサイル開発などにからむ取引に関係した第三国企業も制裁対象とする法案を可決した。オバマ大統領の承認を必要とするが、北朝鮮の最大の貿易相手国・中国の企業が制裁対象となる公算が大きい。

 一方、こうした独自制裁の効果に疑問を持つ見方もある。日本は北朝鮮が弾道ミサイル発射と核実験を強行した06年以来、独自制裁を発動してきた。輸出入規制などは一定の成果があったとされるが、孤立姿勢を変えさせることはできなかった。

 その原因は中国が北朝鮮に食糧や原油を提供してきたことにある。日米韓が制裁を強化しても中国が足並みをそろえない限り、北朝鮮を追い込むのは難しい。国連安保理決議に基づく国際連携が不可欠だ。

 日本にとって制裁強化は拉致問題の行方に関わる。北朝鮮が再調査合意を破棄する可能性もあり、リスクをはらんだ決断である。深刻なジレンマだが、当面、国連安保理の制裁強化につなげて実効を上げることに期待したい。

 01年には米国のブッシュ大統領が、テロ支援国家には「先制攻撃も辞さない」という強硬な国家安全保障戦略を打ち出した。これに危機感を持った北朝鮮は姿勢を転じ、翌年に日本人拉致を認め、ミサイル開発凍結などをうたった「日朝平壌宣言」につながった。

 このことからも北朝鮮が体制維持に自信を持っている限り、自ら非を認めて国際協調へ転じることは期待できない。国際社会の強力な圧力によって6カ国協議の席につかせ、核・ミサイル・拉致の包括的解決を迫ることが唯一の道ではないだろうか。

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