米大統領選始動 国際社会へ政策発信を
誰が長いレースを勝ち抜くのだろうか。11月の米大統領選に向けて、民主、共和両党の候補指名争いの火ぶたが切られた。
米国の次期リーダーがどんな政策を展開するのかは国際社会の大きな関心事である。オバマ政権後の米国のあり方や目指すべき方向について、実りある論戦で各自の政治信条を世界に発信してほしい。
初戦のアイオワ州党員集会で、民主党は「民主社会主義者」を自任するサンダース上院議員が、本命と目されるクリントン前国務長官と互角の戦いに持ち込んだ。
初の女性大統領を目指すクリントン氏は組織や資金力、政治経験などで優位に立ち、盤石との下馬評だった。医療保険や銃規制などでオバマ政治の継承を訴えたが、政治不信が足かせとなった。対してサンダース氏はリベラル色の強い政策を掲げ、オバマ政権の社会政策が不十分だと考える若年層に新鮮な印象を与えたとみられる。
一方、政権奪還を狙う共和党は、党指導部とも敵対してきた保守強硬派のクルーズ上院議員が地道な選挙運動で初戦を制した。移民排斥など歯に衣(きぬ)着せぬ過激発言で支持率首位を維持してきた実業家トランプ氏は僅差で破れた。
この接戦に割り込んだルビオ上院議員の善戦も注目したい。三つどもえの構図が鮮明になり、ルビオ氏が党主流派を結集する存在になれるかどうかが鍵となる。
米国民はこれまで、左右多少の振れ幅はあっても実現が難しそうな政策を掲げる過激な候補を避け、より現実的な選択をしてきた。今回、両党いずれも反主流派候補が勢いづいているのは極めて異例だ。既存の政治や格差のしわ寄せに強い不満を抱く国民の多くが新しい政治を求めている兆しと言えようか。
とはいえレースは始まったばかりだ。予備選・党員集会は来月1日の「スーパーチューズデー」を経て7月の党大会まで続く。
米国同時多発テロを発端に15年にも及ぶテロとの戦いの収束、移民・難民政策、経済格差など争点は多岐にわたる。
とりわけ国際社会で米国のリーダーシップの低下は著しく、強硬姿勢のロシアや台頭する中国などに対する外交・安全保障政策も問われる。不安定化する世界経済の処方箋を示す必要もある。内向きの議論だけでは済まない。
2期8年間のオバマ政権後、どんな米国像を描くのか。新大統領を目指す面々の一挙手一投足を世界が注視している。
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