The War in Syria: US-Russia Agreement Is the Driving Force for Peace

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シリア内戦 米ロ合意を和平のてこに

 シリア内戦をめぐって、米国とロシアが一時停戦の条件で合意し、内戦当事者のアサド政権と反体制派の双方に27日からの停戦を呼びかける共同声明を発表した。

 シリアでは、アサド政権と反体制派、さらに過激派組織「イスラム国」(IS)とが三つどもえの戦闘を続けている。このうちロシアがアサド政権を、米国が反体制派をそれぞれ支援している。

 今回の合意は、後ろ盾の米ロがそれぞれの支援対象に働きかけ、一時停戦を実現しようとする試みだ。この米ロ合意をてこに一時停戦を実現し、本格的な和平協議再開への足がかりにしてほしい。

 ただし、一時停戦が合意通り発効に至るのは容易ではなさそうだ。内戦の長期化でさまざまな勢力が入り乱れ、敵味方の構図が複雑になっているからだ。

 今回の合意で停戦の対象となるのはアサド政権と反体制派で、ISや国際テロ組織アルカイダ系勢力「ヌスラ戦線」は対象外だ。米主導の有志国連合、アサド政権、ロシアの3者はISとヌスラ戦線への攻撃を継続する。

 しかし、実際には反体制派とヌスラ戦線は一部地域で連携してアサド政権と戦っており、区別するのが難しい。ロシアは「ISやテロ組織を掃討する」との名目で反体制派を空爆し、アサド政権を側面支援してきたとされる。

 今回の停戦呼びかけに対し、アサド政権も反体制派の主要勢力も表向きは同意する姿勢を示したものの、反体制派はロシアによる攻撃継続を警戒し、正式な回答を留保している。ロシアが合意をきちんと履行し、反体制派への攻撃をやめるかどうかが、停戦実現への最大の鍵となりそうだ。ロシアの自制が求められている。

 シリア内戦が泥沼化したのは、米ロや周辺国が中東での影響力確保の思惑で介入し、内戦収拾に向けた協力に消極的だったからだ。

 いま最優先すべきなのは、関係国が目先の思惑を捨てて、シリア国民を「今世紀最大の人道危機」から救い出すことである。その意味でも、米ロの責任は特に重い。

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