沖縄の元米兵逮捕
2016年5月21日
◆防止には基地縮小しかない◆
怒り、悔しさが込み上げてくる。またもや沖縄の女性が犠牲になった。本人や家族の無念はいかばかりか。沖縄の人々の憤りや悲しみはいかばかりか。
沖縄県うるま市の会社員女性(20)の行方不明事件で、元海兵隊員で空軍基地で働く米軍属の男(32)が死体遺棄容疑で逮捕された。安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と述べたが、米軍絡みの事件は繰り返されている。「再発防止策」の徹底などで済む話ではない。抜本的な対策には沖縄の米軍基地の縮小を本気で進めるしかない。
住民は常に身の危険
1995年、女子小学生が米兵に暴行された事件を忘れることはできない。沖縄では反基地の怒りが噴き出し、「県民総決起大会」に約8万5千人(主催者発表)が集まり抗議の声を上げた。
それ以降も米兵が絡む事件や事故は絶えず、そのたびに米軍は夜間外出を禁止するなど綱紀粛正を図ってきた。
しかし事件はなくならない。沖縄県によると米兵による殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生。今年3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。
翁長雄志知事が「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と述べたのは当然だ。
在日米軍の専用施設・区域の約74%が集中する沖縄。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表は「沖縄の人々が日常を過ごしているところに、暴力が起き続ける」と語ったが、この指摘は重い。沖縄の人々にこのような思いを背負わせたままでいいのか。いいはずがない。
「同じ女性として怖いし悔しい」「あらためて、何をされるか分からないとの思いを強くした」。同県内の女性たちの声だ。
政府は常に身の危険を感じなければならない住民の恐怖心を、しっかりくみ取るべきだ。
拡大する抗議の動き
抗議行動は同県内、さらに東京にも広がっている。
95年の「総決起大会」に象徴される抗議行動は、日米両政府による96年の普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。
だが同飛行場は返還されず、名護市辺野古で新たな移設基地の建設工事が進められている。今回、菅義偉官房長官は「沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく」と述べたが、軽減は進んでいない。
オバマ米大統領が26日から主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日し、日米首脳会談が行われる。日米両政府は事件について話し合い、米軍基地の縮小、県民の負担軽減に向け固い決意で取り組むよう協議すべきだ。
日米同盟は日本の安全保障政策の基本となっているが、事件は同盟の基礎となる信頼関係を損なうものだ。信頼関係の持てない同盟関係はあり得ず、日本は毅然(きぜん)とした態度を示さなければならない。
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