US President Visits Hiroshima: Let’s Stride Toward Nuclear Disarmament

<--

米大統領広島訪問 核廃絶への大きな一歩にしたい

 現職米大統領として初めて、オバマ氏が広島を訪れ、「核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない」との所感を表明した。核兵器を使用した世界唯一の国であり、今もなお核保有大国のトップが被爆地から世界に向けて発した「約束」は重い。この日に立ち会った日本もまた、米国とともに歩む責務がある。核廃絶への大きな一歩にしなければならない。

 今回の訪問を、任期が残り半年余りとなったオバマ氏個人の「政治的遺産(レガシー)」や単なるセレモニーで終わらせてはならない。メッセージだけではなく、包括的核実験禁止条約の批准や米ロの核軍縮交渉の再開など、具体的な行動に移すよう強く求めたい。

 オバマ氏の所感は、いまだに原爆正当化論が根強い米国内の事情に配慮したものといえる。だが、短時間とはいえ、原爆資料館の中を見学し、被爆者の代表と言葉を交わした。米軍の最高司令官で、核兵器使用のボタンを押す可能性がある大統領がその惨状を直視した意義は大きい。「人類が手に入れた、自らを破壊するすべ」と表現した原爆の非人道性を、今後自身の言葉で伝えてほしい。

 オバマ氏は2009年、チェコ・プラハの演説で「核兵器なき世界」を訴えた。画期的な決意はノーベル平和賞を受賞、核軍縮への期待が高まった。

 しかし、その後のウクライナ危機でロシアとの関係が悪化、核兵器削減の交渉は進まなかった。ロシアの配備済み戦略核はむしろ増加、北朝鮮が核実験を強行するなど、オバマ氏の思惑とは逆に、核の脅威は確実に高まっている。

 米国自体、今後30年間で約110兆円をかけ、核弾頭を搭載する戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイル、戦略原潜の3本柱を近代化する計画だ。オバマ政権は増強ではないと説明するが、ロシアや中国がこれを脅威とみなし、一層の軍拡に走る可能性も否定できない。

 核廃絶にはもう一刻の猶予もない。米国はまず自国の矛盾に向き合わなければならない。

 オバマ氏に同行した安倍晋三首相は「核兵器のない世界実現のために絶え間なく努力を積み重ねていくことが私たちの責任だ」と述べた。しかし、その言葉とは裏腹に、安全保障面で米国の「核の傘」に依存し、即時核廃絶を望む被爆者の思いとは一線を画している。

 スピーチでは、日米同盟の結束の強さをアピールした。安倍政権が、安全保障関連法や特定秘密保護法の成立を強行するなど、平和への道と逆行する現状も気掛かりだ。

 「唯一の戦争被爆国」の日本は本来、世界の先頭に立って核軍縮を進めていかなければならない。「過ち」を二度と繰り返さないために、まず日本政府が行動に移すことが「広島や長崎で犠牲になった人たちのみ霊に応える唯一の道」(安倍首相)だと自覚するべきだ。

About this publication