農業とTPP 情報開示が論戦の前提だ
■2016 参院選■
環太平洋連携協定(TPP)の承認案・関連法案は、先に閉幕した通常国会での承認と成立を見送られ、継続審議となった。
対象が多分野に及ぶTPPの中で、特に注目されているのが農業だ。参院選の勝敗を左右するとみられる32の改選1人区は、大半が農業の盛んな地域である。TPPは、参院選でも主要争点の一つと位置付けられる政策課題だ。
TPPは、農業分野だけでも論点が多岐にわたる。国会が2013年に政府へ保護を求める決議をしたコメや牛・豚肉など農業の重要5項目(586品目)は、3割に当たる174品目で関税の削減・撤廃が決まった。
政府はTPPの農業への影響は最大でも2100億円の生産減少にとどまり、コメへの影響はゼロと試算する。農家からは「現実的でない」など不信の声が相次ぐ。
これに拍車を掛けているのが、農産物への影響に関する試算が日本と米国で大きく隔たっていることだ。コメについて米国際貿易委員会は、対日輸出が23・0%増えると試算している。
日本政府も一定の輸入増加を見込んでおり、同量の国産米を備蓄用に買い上げるため国内産への影響はないとする。本当だろうか。
交渉過程が不透明で情報公開も不十分な現状を考えれば、疑念が出てくるのは当然だ。全国有数の農業産出額を誇る熊本県は、熊本地震で深刻な打撃を受けた。地元では先行きへの不安が広がる。
安倍晋三首相はTPPに疑念を抱く農家を意識して「攻めの農業」を訴える。2020年に農林水産物の輸出額を1兆円に拡大する政府目標を1年前倒しする考えも表明した。野党は「農林水産業をアメリカナイズ(米国化)しようとしている」(枝野幸男民進党幹事長)と批判する。交渉記録の大半が黒塗りだったこともあり、情報公開の徹底も求めている。
参院選で農業とTPPを巡る論戦を深めるためにも、政府は情報開示に努めるべきではないか。
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