Shooting of Police Officers – the Need To Discuss a Gun-Free Society

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米南部テキサス州ダラスで、デモ警備中の警察官が銃で撃たれ、5人が死亡した。黒人射殺事件への抗議デモのさなかに起きた。犯人の黒人は「白人、特に白人警官を殺したい」と、銃撃後に話していたという。

 事件直前には、南部ルイジアナ州と中西部ミネソタ州で黒人射殺が相次いだ。1件目では2警官が男性をねじ伏せた上で発砲した様子が動画で撮影され、インターネットで公開された。2件目は黒人男性が警察官の指示で免許証を取り出そうとした際に撃たれた。同乗していた友人女性が動画をネット公開して警察への抗議が広がった。

 ともに警察の説明した事実関係と違い、発砲の必要性すら疑われる内容だった。両事件について適切で公平な公表をしなかった警察の対応がまず責められるだろう。

 ダラスの警官殺害容疑を持たれる黒人は元陸軍予備役兵士で、米陸軍によると、2013年11月から14年7月までアフガニスタンに派遣され、武器の取り扱い訓練を受けていた。単独犯と見られ、米紙報道では、黒人の過激グループを支持していたとされる。容疑者宅の家宅捜索では、爆弾の材料やライフル銃が発見された。黒人射殺事件に反発し、差別への反感から白人警官への恨みを募らせた可能性がある。

 デモ参加者によると、抗議活動は平和なものだったという。訴えの内容も「人種を超えて、お互いの愛を」などと唱和していた。参加者800人の中には子ども連れの母親も目立ち、警備に当たる警官も笑顔で対応していたという。

 オバマ米大統領は「互いを認め合う姿勢が米社会に本当の変化をもたらす」と述べ、スペインでの国際会議を切り上げてダラスの追悼式に出席することにしている。

 ただ、銃撃戦の末に警察側が爆弾を仕掛けたロボットを使って容疑者を爆死させたことは驚きだ。通常はこの種のロボットは海外の戦闘で用いられる。5人の警官が同時に殺害されるのは銃犯罪が多い米国でも異例とはいえ、警察の対応が一足飛びに軍隊的なものになった点は理解に苦しむ。

 背景には、米をむしばむ銃社会という現実がある。警官に職務質問される際に免許証をポケットから取り出す動きを拳銃に手をやったと誤解した可能性すらある。

 同種事件があっても、銃規制の具体的な機運は盛り上がらない。大詰めにある大統領選では、銃規制について踏み込んだ議論をし、「銃なき社会」を語るべきだ。

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