The Questionable Quality of the US Presidential Election

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米大統領選 資質が問われる異常事態

 米国の政治の劣化ぶりがあらわになったように思える。

 米大統領選の第2回候補者テレビ討論会が行われ、民主党のクリントン氏と共和党のトランプ氏が互いの人格攻撃を繰り返した。

 最大の注目点はトランプ氏が自らの女性蔑視発言をどう弁明するかだった。トランプ氏は11年前、下品な言葉で「有名人なら女を思うままにできる」などと発言したことが明るみに出たばかりで、共和党からも離反が起きている。

 トランプ氏は「(発言は)誇らしくはないが、ロッカールームでの会話のようなもの」と開き直る一方で、クリントン氏の夫の元大統領による女性問題を取り上げて反撃に出たが、視聴者の理解は得られなかったようだ。

 米大統領選のこの局面で、トランプ氏の「大統領としての資質」が改めて問われている。

 トランプ氏はこれまでも女性、イスラム教徒や移民などに対し数々の差別的な発言をしており、人権感覚に疑問符が付いていた。

 また、事実に基づかない批判、対立候補への口汚い攻撃や、過度の自己正当化などの特質も目につく。長年、所得税納付を逃れてきた可能性も指摘されている。

 そもそも、こうした「候補の資質」については、予備選の段階で政党と党員がきちんと判断し、問題のある候補はふるいにかけておくべきなのだ。共和党はその役割を果たさなかった。

 投票まで1カ月を切ったというのに、討論会が個人攻撃の泥仕合に陥り、具体的な政策論争が深まらないのは異常な事態である。その責任の大半は、トランプ氏と共和党にある。

 他方でクリントン氏にも国務長官時代に公用で私用メールアドレスを使用した問題がある。クリントン氏は謝罪したが、まだ有権者を納得させられていない。

 米国の大統領は事実上、世界で最も重要なリーダーであり、その人格と識見は国際社会の針路を左右する。米国民は候補者の資質と政策を精査した上で、間違いのない選択をしてほしい。

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