国会で環太平洋経済連携協定(TPP)承認案・関連法案の審議が始まる。
米欧で経済のグローバル化への批判や保護主義的な動きが強まるなか、日本の動向は世界が注視している。日本は今国会でTPP承認案を確実に成立させ、自由貿易の推進を主導すべきだ。
日米など12カ国が合意したTPPは物品の関税撤廃だけでなく、環境や労働、知的財産などの分野を含めて広範なルールを定めている。高水準の貿易・投資ルールは、実質的に世界標準となる21世紀型の自由貿易協定といわれる。
米国では2人の大統領候補がそろってTPPに反対している。オバマ米大統領は在任中に議会の承認を得たい考えだが、野党の米共和党から早期承認は難しいとの声が出ている。
こうした状況を踏まえ、日本国内では「TPP承認案の成立を急ぐ必要はない」との声が出ているが、あまりに消極的で内向きの発想ではないか。
TPPが発効するには、域内の大国である日米両国がそろって国内手続きを終える必要がある。だからこそ、日本がTPP承認案を今国会で成立させることが最大の外交カードとなり得る。
第1に、TPPの内容を確定し「再交渉はあり得ない」との立場をはっきりさせることで、米議会が承認するよう強く圧力をかけられるようになる。
第2に、オーストラリアやニュージーランドなど他のTPP参加国も日本に追随し、議会承認などの国内手続きを進めやすくなる。
第3に、他の通商交渉への好影響が期待できる。たとえば、日中韓インドなど16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉で、自由化に慎重な中国やインドに前向きな姿勢に転じるよう迫ることができる。
日本は欧州連合(EU)との経済連携交渉で年内の大筋合意をめざしている。TPP承認案の成立を先送りすれば、EUが求めている農産品の関税削減・撤廃などで日本は妥協案を示せず、交渉が漂流するリスクさえある。
すでにインドネシア、タイ、フィリピン、台湾などがTPPへの関心を示し、韓国も将来の参加の意向が伝えられている。
日本はこうした国・地域を支援するためにも、率先して自らの責務を果たすべきだ。野党も建設的な態度で審議に臨んでほしい。
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