Questioning the UN’s Role in Maintaining Global Stability

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国連事務総長の潘基文氏が月末に任期満了で退任し、1月からポルトガル元首相のグテレス氏が新事務総長になる。10年ぶりの「国連の顔」交代だ。

 第2次大戦後の世界秩序を主導してきた米欧諸国はいま、変化を求める政治のうねりに揺れ、内向きで自国優先の路線に走ることが懸念されている。国際社会の安全と安定を支える国連がどんな役割を果たすかが問われる局面だ。

 国連にとって不安な点のひとつは、米国のトランプ次期大統領の外交姿勢が読めないことだ。

 米国が自国の利益ばかり優先して大国同士の直接取引を好み、国連を舞台とする多国間の調整や合意づくりをないがしろにすることはないか。環境や開発、人権といった国連が時間をかけて成果をあげてきた分野を軽視し、国際的な合意や規範から一方的にはずれる恐れはないか。疑問は尽きない。

 地球温暖化対策でトランプ氏は、国連のもとで合意に至ったパリ協定から離脱する意向を示したことがある。そうなれば影響は甚大だ。北朝鮮の核問題やシリア内戦など、国連が直面する課題は山積している。米国が責任ある態度を示し、難題に立ち向かわない限り国連は機能しない。

 建設的に関与するよう、各国はトランプ次期政権に働きかける必要がある。国連に限界や欠点は少なくないが、ほかに代わりうる枠組みはない。新しい事務総長のリーダーシップにも期待したい。

 日本がソ連(現在のロシア)と国交を回復した1956年に国連に加盟してから、この18日で60年を迎えた。安全保障理事会の非常任理事国に最も多く選ばれ、国連財政への拠出も米国に次いで多いなど、大きな貢献をしてきたことを誇ってよい。

 国連の平和維持活動(PKO)で「駆けつけ警護」などを可能にし、貢献強化へ新たな一歩も踏み出した。

 だが、日本の発言力や存在感はまだまだ不十分だ。例えば国連で働く日本人職員の数は、望ましいとされる水準を大幅に下回っている。国連で活躍する人材を輩出できる態勢や環境づくりが課題だ。

 日本の役割拡大をめざす安保理の機構改革もそろそろ前に進めたい。それには日本の地位強化が国連にどう役立つのか、説得力のある案を示さなければならない。求められるのは、外交の大きなビジョンを構築し推進する力だ。

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