The United States – What a Selfish and Complicated Country

<--

1956年に公開されたハリウッド映画『ジャイアンツ』は、20年代のテキサス州が舞台である。この作品が遺作となる伝説のスター、ジェームズ・ディーンは、牧場の使用人を演じていた。石油を掘り当て、億万長者になる。

 ▼新しい石油採掘法を開発した米国では、20世紀に入ると油田開発が急速に進む。やがて、中東などでも油田発見が相次いだ。ディーンが、大地から噴き上げる石油を全身に浴びる姿は圧巻だった。米国主導のエネルギー革命を象徴するシーンともいえる。

 ▼半世紀たって、そんな石油に頼る文明に警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画が、やはり米国で作られた。『不都合な真実』は、地球温暖化の防止を訴える、アル・ゴア元副大統領の講演活動を追っている。大統領選に敗れた後、ライフワークにしてきた。

 ▼キリマンジャロの雪が解け、南極やグリーンランドの永久凍土が縮小する。映像やグラフを多用して、温暖化の恐ろしさを訴える姿は、世界各国で話題を呼んだ。温暖化を防ぐには、石油など化石燃料の使用を抑えて、二酸化炭素の排出量を減らすしかない。国際世論の高まりに貢献したゴア氏は、ノーベル平和賞も受賞している。▼2015年には、約150カ国が参加する温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」ができた。さて、これからという時にトランプ米大統領の口から飛び出したのが、「離脱表明」だった。米国の元副大統領が盛り上げた、温暖化を何とか食い止めようとする機運に、現職大統領が冷や水をあびせた形である。

 ▼もっとも米国各地の市長からは、大統領の表明に反発してパリ協定を支持する声が続々と上がっている。米国とは、なんとわがままで、ややこしい国であろう。

About this publication