先進7カ国(G7)環境相会合は、米国以外の6カ国が地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の下で取り組みを進めることを再確認する共同声明を採択し、2日間の日程を終えた。協定離脱を表明した米国は方針転換の意思がないことを明確にし、G7の足並みの乱れが改めてあらわになった形だ。
米国の姿勢は、世界第2位の温室効果ガス排出国としての責任の放棄に等しく、身勝手というほかないが、対策が遅れれば、地球温暖化の深刻な被害が急速に現実味を帯びかねない。温暖化への国際的な取り組みを停滞させないために国際社会は結束し、孤立の道を進む米国に繰り返し翻意を促し続ける必要がある。
会合はトランプ米大統領がパリ協定離脱を表明後、初めて各国の環境相が集まる機会となった。米国はパリ協定から離脱しても協定の親条約である気候変動枠組み条約にはとどまり、温室効果ガスの排出削減を進めるとした。だが、具体的な国内政策を示さず、初日の議論の途中で早々と帰国した。本気で削減するつもりがあるとはとても思えない姿勢だ。
声明の発表にこぎ着けたとはいえ、米国は温暖化対策に関する部分に加わらず、国内政策に合致する範囲で温暖化対策を進めるとの方針が脚注部分に記されたにすぎない。温暖化の影響を受けやすい途上国を支援する「緑の気候基金」への資金拠出も停止する方針で、これも懸念材料だ。
パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを目標にする。この数字は大洪水や巨大台風、海面上昇、食料不足といった温暖化被害が深刻になるのを避けられるかどうかの境目とされる。
米国のNPOクライメート・インタラクティブによると、パリ協定で各国が約束した排出削減目標を分析すると、2030年までの世界全体の削減量のうち米国分が21%を占める。その削減がない場合、今世紀末の世界の気温は3・6度上昇し、2度未満の目標は一層難しくなる。トランプ氏は責任の重さを自覚してほしい。
ただ米国全体が協定に背を向けているわけではない。米メディアによると、少なくとも10州の知事と83市の市長が協定支持を表明。全米の市長、州知事、大学学長や企業の間で、協定に基づく米国の温室効果ガス削減目標の達成計画を国連に提出する準備も進んでいるという。そうした米国内の動向との連携強化も大事だ。
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