Exchanging Threats: America’s and North Korea’s ‘Verbal Strikes’ Grow More Fearsome

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 72年前、広島と長崎で瞬時に20万人を超す犠牲者が出た原子力爆弾による日本の惨状を記憶にとどめようとする日々が続く中で、米国と北朝鮮がお互いにミサイル攻撃を行うと言葉による威嚇を続けている。

 言葉によって戦争の危機は増長する。有事となれば、わが国や韓国、中国などが巻き込まれる恐れが大きい。あらためて両国には、言葉と行動の自制を求めたい。

 北朝鮮による軍事圧力は、7月4日に新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)を打ち上げて新たな段階に入った。国連安全保障理事会が北朝鮮の主要な産品である石炭や海産物の全面禁輸などを柱にする制裁決議を全会一致で採択した。

 その後、米紙ワシントン・ポスト電子版が、北朝鮮がICBMに搭載可能な小型核弾頭の開発に成功したと報じると、トランプ米大統領は「北朝鮮は米国をこれ以上脅さない方がいい。世界が見たこともないような炎と怒りに直面することになる」と武力行使を示唆して警告した。以前から「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べてきた北朝鮮への核攻撃をほのめかしたものだ。

 これに対し、直ちに北朝鮮の朝鮮人民軍の戦略軍司令官は、朝鮮半島に戦略爆撃機を飛ばせた米軍基地のあるグアム周辺に向けミサイルを発射する方針を示した。さらに、きのうは新型中距離弾道弾ミサイル「火星12」4発をグアム沖30~40キロの海上に打ち込む詳細な包囲攻撃案を明らかにした。

 ミサイル発射時には「島根県、広島県、高知県の上空を通過する」と述べ、細かな飛行ルートまで明らかにした。ミサイルが上空を通過する日本も落下などの危険が増すことは明らかだ。早くも3県の住民からは不安と怒りの声が出ている。

 ミサイル発射のボタンを握っているのは、北朝鮮の朝鮮労働党の金正恩委員長とトランプ大統領の2人しかいない。1発でも撃てば多くの将兵や一般市民の犠牲が出ることは間違いない。お互いの矛を収めないまま「チキンレース」に突き進めば、取り返しのない悲劇となる。

 2人には理性に立って行動することを求めたい。お互いに最初の1発を撃たないという先制攻撃をしない決断を行うことだ。トランプ大統領には、政権内で議論し、同意を得ていないツイッターを用いたメッセージを封印することも求めたい。

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