国連総会演説 大国らしい言葉遣いを
危機的な状況にあるとはいえ、あざけりや対立をあおるのが、「偉大な国」の指導者にふさわしいとは思えない。
国連総会の一般討論で米国のトランプ大統領が就任後初めての演説を行った。
トランプ氏は、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」とあざけり、「自国と同盟国が防衛を迫られれば完全に破壊するしか選択肢はなくなる」と警告した。拉致問題などにも触れ、「ならず者政権」とも批判した。
国連総会では、北朝鮮に対し各国の代表から厳しい批判が相次いでいる。
トランプ氏も、北朝鮮への国連制裁決議を着実に履行するよう各国に強く求めた。米国としても最大級の圧力をかけ続けるというメッセージを発した。
北朝鮮に対し無謀な核・ミサイル開発から撤退するよう強く求めることは、加盟国の一致した要求だ。
それにしても、「完全破壊」とは穏当ではない。「ロケットマン」は、ツイッターならまだしも、国連で発するのはいかがか。
北朝鮮も国営メディアで挑発的な言葉を発し続けている。だが、世界最強の国の指導者が同じレベルに立つ必要はない。
荒っぽい言葉は関係国の人々の心理にも影響する。言葉の応酬が偶発的な武力衝突を招かないか。ドイツのメルケル首相が「この類いの威嚇には反対だ」と述べるなど、各国から懸念の声が上がっている。
トランプ氏はイランに対しても「残忍な体制」と批判した。その上で、米欧ロなどとイランが2015年に締結した核合意を「最悪の一方的な取引」と破棄を示唆した。
イラン核合意は、原油禁輸や金融制裁などの圧力を強めた結果、イランも一定の譲歩を行った側面がある。米国もそれを主導した。
北朝鮮に対し国際社会の求めに従うべきというなら、イラン核合意も尊重すべきではないか。
米ホワイトハウスはトランプ氏の演説を「米国第一外交」としている。自国第一主義に基づくなら言葉を強めても共感は得られまい。
同じ国連本部では、核兵器禁止条約の署名手続きが始まった。
多国間協議の努力の成果だ。来年にも発効する見込みという。
日本も唯一の戦争被爆国として条約に関与してほしい。
世界を動かすのは、あざけりや罵倒ではないことを確認したい。
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