NAFTA交渉 理不尽な米国に歯止めを
どうみても、米トランプ政権の諸要求は無理筋で大局観を欠く。
米国、カナダ、メキシコの3カ国による北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が始動した。初会合では執拗(しつよう)に自国の国益を追求する米国と、それをけん制しようとするカナダ・メキシコの溝が鮮明になった。年内妥結に向け少なくとも4回会合を開くというが、自国の貿易赤字削減を金科玉条に2国に理不尽な通商政策を迫るトランプ政権は身勝手に過ぎる。
交渉の行方は対米輸出拠点としてメキシコに進出している日系企業にも悪影響を及ぼしかねない。米国には自重を、カナダ・メキシコには毅然(きぜん)とした対応を、日本政府はそれぞれ強く促すべきだ。
NAFTAは、1994年に発効した自由貿易協定で、2008年には関税が撤廃され、域内総生産(GDP)は約21兆ドル(2300兆円)に達する。トランプ大統領は選挙期間中からNAFTAの影響で、賃金の安いメキシコに米国から生産拠点が移り、雇用が失われ、貿易赤字も増えたと主張し、離脱すらほのめかしてきた。
再交渉の場で、米国は貿易赤字削減と米製造業復権のため、次の2点を強く求めているようだ。
一つは域内の部品をどの程度使えば域内関税をゼロとするかを決める「原産地規則」の見直しだ。自動車の場合、全部品の62・5%以上を域内で調達するのが条件だが、米国はこの比率を引き上げて米国製部品の使用を増やすことで雇用拡大ももくろむ。もう一つは対抗措置として他国の通貨安誘導を防ぐ「為替条項」導入で、米国の貿易赤字削減が狙いだという。
しかし、どちらもお門違いだ。米国で製造業雇用者が減少した最大の原因は自動化・機械化の進展だ。また、貿易収支の改善は為替政策や貿易の縮小ではなく、貿易の拡大で進めるのが筋である。
メキシコへ進出している日系企業の拠点は、自動車関連を中心に1100を超す。今後の交渉次第では、日系企業の生産網も見直しを余儀なくされる。日本も傍観している場合ではない。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.