US Dismissal of the International Community Threatens Stability

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米トランプ政権が国際機関や国際的な枠組みを軽視する姿勢を一段と強めている。指導力を発揮すべき超大国が身勝手な行動に走れば、世界の安定は脅かされる。米国は責任の重さを自覚すべきだ。

 米国は、6月に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したが、今月は国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退も決めた。反イスラエル的な姿勢や組織改革が不十分なことを理由にあげた。

 世界経済の安定を損ないかねない決定も目立つ。先週は貧困問題解決などのために計画していた世界銀行の増資に反対を表明。結果的に増資は見送られた。金融危機に即応する体制づくりが必要な国際通貨基金(IMF)の増資にも批判的な姿勢を崩していない。

 さらに問題なのは、通商問題に関する紛争処理を担う世界貿易機関(WTO)の上級委員の選任手続き入りに反対していることだ。任期切れでやめる委員がいても欠員が埋まらないため、7人で構成される委員会のメンバーが年末には4人まで減る可能性がある。

 こうした米国の態度の裏には、WTOが米国に不利な判断を下す例があることへの不満の高まりがあるとされる。米通商代表部(USTR)は今春の報告書で、米国はWTOの判断に必ずしも従う必要はないとの姿勢も示した。

 WTOの裁定に各国が従うことでルールに基づく自由貿易体制は維持されてきた。紛争解決機能が弱められたり、大国の判断で無視されたりするようなことがあれば、決定に従う国はなくなり、貿易秩序は混乱に陥る。

 もちろん、世銀など国際金融機関はかねて、組織の官僚化や非効率的な資金の使われ方が批判されていた。WTOについても、経済のサービス化やデジタル化、経済システムの異なる中国の台頭など、競争環境の変化にルールづくりが追いついていない面もある。

 ただ、こうした問題は国際機関のなかで真摯に議論することで解決すべきだ。組織の弱体化を招くような強硬姿勢や脅しで対処すべきものではない。

 モノや資金、人が国境を越えて動くグローバル化が一段と進む中で、その負の影響を強調する声も増えている。国際的な経済活動が広く恩恵をもたらすようにするには、グローバルな協調が不可欠だ。米国がその輪に加わらなければ成果を上げることはできない。

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