トランプ米大統領が初めて中国を訪れ、習近平国家主席と会談した。習氏が皇帝の住まいだった紫禁城を自ら案内する厚遇と、超大型商談が目立ったが、肝心の北朝鮮問題での溝は埋まっていない。
北朝鮮に核放棄を促す手法をめぐってトランプ氏は圧力を重視する。習氏は朝鮮半島の非核化に力を尽くすとしつつも、対話を求める姿勢を崩さず、米国の武力行使もけん制した。共同記者会見では対立の表面化こそ避けたが、問題が先送りされたにすぎない。
核実験などを繰り返す北朝鮮の姿勢は一線を越えた。中国がもう一段の措置をとらない場合、北朝鮮は核放棄に応じる必要はないという誤った判断をしかねない。米中一体での圧力が今こそ重要だ。
トランプ訪中で中国側は2500億ドル(約28兆円)の大型商談に応じ、貿易不均衡問題での圧力緩和に成功した。習氏はさらに駒を進め、最近、対米外交で言及を控えていた「新しい形の大国関係」と全く同じ考え方をトランプ氏に提起した。
「太平洋は両国を受け入れることができるほど十分に大きい」。習氏は共同会見で太平洋を巡る貿易・安全保障の権益を分け合う意味を込めた文言も添えた。トランプ時代の米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から退いたのを好機と見て再び攻勢をかけている。
習氏が「新しい形の大国関係」を提起したのは4年前だ。オバマ前大統領は、そこに米中2国で世界を仕切る「G2」への願望を感じ取る。その強い警戒感は、アジア太平洋に米国が回帰する路線の強化につながった。トランプ氏が今後どんな姿勢を示すのか。それはアジア太平洋、インドを含む経済と安全保障に大きくかかわる。
残念だったのは中国の人権、民主化問題で突っ込んだやりとりがなかったことだ。中国が唯一、その意見を気にする実力ある国家が米国である。米大統領には、自国のビジネス上の利益追求ばかりではなく、中国が世界と協調する方向へ導いてゆく義務がある。
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