日米原子力協定 核燃サイクルの見直しを
日本が国策として進める核燃料サイクル政策の基盤で、7月に発効30年の期限を迎える「日米原子力協定」の自動延長が決まった。期限の半年前までに、日米両政府から破棄や改定交渉の申し入れがなかったためだが、行く手に待ち受ける難題は多い。
同協定は1988年に発効した。米国が、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理などを、非核保有国である日本に特権的に認めている。原発政策を維持したい日本政府は歓迎の意向を示した。
だが、自動延長後は日米いずれかの通告によって、半年後に終了できるようになる。いつ事態が急変するか分からない。日本の原子力政策は、むしろ不安定さを増すともいえよう。
最大の問題が、核兵器に転用できるプルトニウムの保有量の多さだ。日本は2016年末時点で、国内外に計約47トンを持っている。長崎型原爆にして約6千発に相当する。米国の一部をはじめ国際社会からは、安全保障上の観点などで懸念する声が高まりつつある。
無用な摩擦や誤解を生じないためにも、保有量の削減が必要だが、めどは立っていないのが現状だ。
日本は、国内の再処理によって取り出したプルトニウムを再利用する核燃料サイクル計画を進めてきた。その中心となるのが“次世代の原発”といわれる「高速炉」である。だが、16年に高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)が相次ぐトラブルで廃炉が決まり、事実上破綻している。
現在、国内で唯一プルトニウムを利用できるのは、通常の原発でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電だけだ。それも、東京電力福島第1原発事故によって状況が一変した。再稼働にこぎ着けた原発でのプルサーマル発電は3基にとどまっている。
しかも、プルトニウムの消費量は少なく、思うように成果は上がらない。今こそ、原発政策の中心となる核燃料サイクルを見直す検討のときではないか。
核燃料サイクルは世界各国が計画を進めてきた。だが、経済性や安全性の観点から米国や英国、ドイツなど先進国の多くが開発を断念した。日本も行き詰まり状態にある。サイクル事業に要する巨額の費用は、元をたどれば電気料金など国民の負担によるものだ。続ければ、それだけ無駄が出てくる。
主要施設の一つである使用済み核燃料再処理工場(青森県)も20回以上完成が遅れ、稼働の見通しは立っていない。政府は3年後以降に、あらためて稼働を目指すが、この際、計画をいったん凍結して議論を深めるべきである。
政府には、置かれた状況や国民の声をしっかり踏まえ、保有するプルトニウムの行方も含めて方向を示すよう求めたい。
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