11月6日の米中間選挙まで半年となった。トランプ大統領の支持率は40%程度と低く、上下両院の過半数を占める与党・共和党の苦戦が予想される。トランプ氏が支持基盤固めのため、内向きの姿勢を強めないかが気がかりだ。
中間選挙は時の大統領に対する信任投票の色合いが濃い。共和党が劣勢に立たされ、上院や下院で過半数を割り込めば、野党・民主党がロシアとの不透明な関係を理由にトランプ氏の弾劾に動きかねない。トランプ氏が望む法案を通すのも難しくなる。
自身が死に体に陥るのを避けるため、いま何をなすべきか。トランプ氏は中間層や白人層の支持基盤を固めようと、保護貿易や移民制限などの原点に回帰する姿勢を強めているようにみえる。
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限の発動、不法移民を阻むメキシコ国境の壁建設への執着などが好例だ。なかでも心配なのは、一方的な貿易制裁の拡大である。
世界貿易機関(WTO)のルールに抵触しかねない輸入制限を強行した米国の罪は重い。だが主要国も自国の適用除外を求めるのに躍起で、保護貿易の自制を促す努力が乏しいのではないか。
韓国は適用除外の見返りに、米韓自由貿易協定(FTA)の見直しに応じ、米国仕様の輸入車受け入れ枠の拡大を認めた。カナダやメキシコも北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で、米国産部品の調達を実質的に増やすような条項をのむ可能性がある。
自国の国益を守るのはもちろん重要だが、米国の機嫌取りに終始して、保護貿易の広がりを容認するのでは困る。日本を含む主要国が連携し、米国のルール違反を厳しく問い続けるべきだ。
外交・安全保障の分野にも懸念がある。トランプ氏はイランの核開発阻止に向けた包括合意を批判し、12日までに修正案を示すよう関係国に求めている。
包括合意の瓦解はイランに核開発再開の口実を与え、中東ひいては世界全体を危険な状態にさらしかねない。トランプ氏が破棄を思いとどまるよう、主要国が協力して説得すべきだ。
米国が世界の平和や繁栄に果たす責任を放棄しても、自由化や民主化の後退を放置していいわけではない。主要国は中間選挙を控えたトランプ氏に振り回されるだけでなく、国際秩序の安定にもっと汗をかくべきだろう。
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