The United States’ Automobile Tariff

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トランプ米政権が自動車の輸入制限を検討している。輸入増が米国の安全保障を脅かしているというのが理由だ。

 通商拡大法232条に基づき、輸入車に最大25%の関税を課す案などが浮上している。現在、乗用車への輸入関税は2・5%であり、大幅な引き上げになる。

 自動車や自動車部品の貿易規模は大きい。2017年度の日本車全体の対米輸出台数は約177万台で、輸出全体の4割近くを占めている。

 米国は3月に同じ理由で鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動したが、影響は比べものにならない。京滋にも多くの工場がある。

 世界貿易機関(WTO)は安全保障を理由とした輸入制限措置を例外として認めているが、実態にそぐわない脅威を理由に国内産業を保護するのは禁じ手だ。

 輸入制限に対抗し、多くの国による報復関税などの措置が連鎖するようなことになれば、世界経済を冷え込ませかねない。

 自らが主導してきた自由貿易体制を踏みにじるような政策は撤回するべきだ。保護主義の広がりこそが世界の安全保障の脅威であることを、トランプ氏は理解しなくてはならない。

 輸入制限の背景には、11月に控える中間選挙があるとみられる。

 16年の大統領選でトランプ氏を当選に導いたのは、工場が海外に移転し職を失ったと不満を抱く労働者だった。

 国内保護を狙った強硬な通商政策を示し、労働者の支持を広げようというわけだ。

 米国内でも輸入制限への反対論は広がっている。与党共和党幹部は即刻撤回を求め、232条の使用を「危険だ」と指摘した。

 本部をワシントンに置く世界自動車メーカー協会も、消費者への打撃を訴えている。

 しかし、米国では貿易政策に関する大統領の権限が強い。鉄鋼とアルミニウムの輸入制限では議会や同盟国の猛反対を押し切った。今回も予断を許さない。

 日本政府には、米政権が輸入制限を通商交渉の材料にしているとの見方がある。

 発動の適用除外を求めれば、逆に2国間の自由貿易協定(FTA)の交渉テーブルに着くよう迫られる恐れがあるという。

 日本は毅然(きぜん)とした態度で、米国に国際的な自由貿易のルールを守るよう求めるべきだ。他の輸出国とも連携を深め、トランプ氏に粘り強く働き掛けてほしい。

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