Reset of the US-North Korea Summit: Sudden US Policy Shift

 

 

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米朝会談再設定  唐突な米国の方針転換

会談で成果を出すよりも、会うこと自体に意味がある-。そう宣言したようにもとれる。

 トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談を当初の予定通り6月12日にシンガポールで行うと発表した。

 史上初となる首脳会談は、半世紀以上対立してきた米朝関係を大きく変える歴史的な意味を持つ。両国のトップ同士が直接対話に臨むことは歓迎したい。

 ただ、トランプ氏は「1回の首脳会談で非核化が実現するとは言っていない。会談はプロセスの始まりだ」と述べ、非核化の交渉に時間をかけることを認めた。何かに署名をすることもないとしており、12日に非核化に関して合意がまとまる可能性は小さくなった。

 これでは、交渉のスタートラインに立つことを確認するだけの会談になってしまわないか。最も重要な非核化の実質的な交渉が形骸化しないか気になる。

 北朝鮮への制裁は解除しないとしたものの、トランプ氏は北朝鮮の体制を保証すると明言した上、「最大限の圧力」という言葉は使わず追加制裁も控える、とした。

 非核化の手順に関する両国の隔たりを残したまま、北朝鮮の立場に理解を示す方針転換といえる。唐突な印象を否めない。

 トランプ氏の「軟化」は、米国が求める短期間での「完全かつ検証可能で不可逆的」な非核化ではなく、行動ごとに見返りを求める「段階的」な解決を目指す北朝鮮を安堵(あんど)させたことだろう。

 今後の交渉が北朝鮮ペースで進む可能性もあるのではないか。非核化への道筋はいっそう不透明になったと言わざるをえない。

 見通しにくくなった非核化問題に代わるテーマとしてトランプ氏が言及したのが朝鮮戦争(1950~53年)の終結だ。4月の南北首脳会談で文在寅韓国大統領と金氏が年内推進で合意し、トランプ氏に働きかけていた。

 首脳会談を目前にした段階で急浮上したテーマだけに、どこまで細部を詰められるかは疑問だ。秋の中間選挙を前に、会談成功を演出しようと、トランプ氏は前のめりになっているのではないか。

 拉致問題解決の働きかけをトランプ氏に頼らざるを得ない日本政府としては、米国の方針転換で立ち位置がさらに複雑となった。

 「最大限の圧力」路線にこだわりすぎれば、米国との距離が開いていく。トランプ氏の発言の真意を見失わず、柔軟に対応していく必要がある。

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