Turkish Currency Crisis

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トルコの通貨危機が世界経済に悪影響を及ぼしている。背景には米国とトルコの対立があり、両国指導者の行動が危機に拍車をかけている。大事に至る前に国際社会は協調して動くべきだ。

 対立の発端は二〇一六年にトルコで起きたクーデター未遂事件だ。トルコのエルドアン大統領が事件に関与したとみなす在米のイスラム教指導者、ギュレン師の引き渡しを米国は拒否し続けている。トルコは米国人牧師、ブランソン氏を事件に関与したとして同年拘束した。

 牧師は米共和党の有力支持基盤、キリスト教福音派に属する。米中間選挙が近づく中、トランプ大統領は牧師解放に応じないトルコに対し、鉄鋼・アルミニウムへの関税を二倍に引き上げる経済制裁を表明した。一方、慢性的なインフレに悩むトルコでは、中央銀行が金利を引き上げる必要に迫られていた。しかし、金利自体を敵視するエルドアン大統領が金融政策に介入する姿勢をみせて利上げは困難となり、通貨防衛策が立てにくい状況に陥ってしまった。

 両大統領のやや過激な政策発動の結果、信用が低下したトルコの通貨リラの価値は一時、年初来の下落率が四割となった。政治指導者による「人災」ともいえる異例の通貨危機の勃発である。

 この影響は直ちに各国金融市場に連鎖した。トルコに多額の投資をしている欧州主要国の株価が一気に下がり、その流れは日米の株式市場にも波及。各国の株価は依然、不安定な状態が続く。

 アルゼンチン、南アフリカといった新興国といわれる国の通貨も軒並み下落。トルコの経済状況を不安視した投資家が、資金を引き揚げ始めたからだ。

 金融市場の混乱は放置すると暮らしの痛みに直結する。日本では、円高による株価下落が続けば企業財務の悪化を招き、賃金抑制につながる。通貨が弱い国では輸入価格急騰でインフレが起き、世界経済の足かせ要因にもなる。

 しかし両大統領は妥協の気配すら見せていない。このままだと「プレジデント(大統領)経済危機」が起きかねない。日本を含む国際社会は早急にスクラムを組み、二人の大統領に自省を促す必要がある。そのための仕組みとして日米やトルコも参加する二十カ国・地域(G20)財務相、中央銀行総裁会議があるのではないか。度が過ぎた対立や自国中心主義が、自らも痛めるとの現実を各国は議論を通じ共有すべきだ。

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