Doesn’t the US-Mexico Deal Hinder Free Trade?

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米国とメキシコが北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉の2国間協議で基本合意した。

 自動車の関税をゼロにする条件を見直し、米国内産の部品が増えるようにする。実質的な「バイ・アメリカン」条項である。

 トランプ政権は「メキシコに奪われていた雇用を取り戻す」と訴え、米国の安全保障を理由にメキシコ製の自動車に高関税を課す用意を示していた。米国が押し切った形だ。

 2国間の貿易摩擦の解消のために、制裁をちらつかせ譲歩を迫る手法が定着する可能性がある。日本にも影響しかねない。問題のある前例にならないか。

 NAFTAは米国とカナダ、メキシコの3カ国により1994年に発効した。トランプ政権はNAFTAの見直しを公約に当選し、1年前から再交渉を行っていた。

 合意の柱は二つある。域内からの部品調達率を現行の3カ国で62・5%から米・メキシコの2カ国で75%に引き上げることと、部品の40~45%を時給16ドル(約1800円)以上の工場で造ることを義務づける賃金条項だ。

 トランプ大統領は、これらの合意で米国からの部品調達が増えると支持者向けにアピールしている。

 しかし、トランプ氏の思惑通りに米国への生産移管が進むとは限らない。自動車関連工場の時給は米国内が20ドルだがメキシコは7ドル程度とされる。メーカーはメキシコ国内の一部で16ドルまで上げる方を選ぶのではないか。そうすれば価格の上昇として米国の消費者に跳ね返る。

 メキシコに進出している日本の自動車メーカー4社への影響も大きいはずだ。

 自動車メーカーは、賃金の低いメキシコで車を生産し、関税のかからない米国へ輸出している。部品調達と供給網の見直しや賃上げを迫られる。影響は北米域内にとどまらないのではないか。

 米国はカナダとも週内合意を目指しているが、先行きは不透明だ。決裂すれば、カナダから米国へ輸出している企業への影響も甚大だ。

 トランプ政権は今後、多国間交渉を避けて2国間協議に固執する可能性が高い。世界貿易機関(WTO)を中心とした多角的貿易体制が骨抜きになりかねない。

 9月から日米の閣僚級貿易協議が予定されている。米国の出方を注視する必要がある。日本政府は多国間主義の原則を貫いてもらいたい。

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