安倍晋三首相が近くイランを訪れ、衝突の危険が高まっている米国との関係を仲介する方向で調整が進んでいる。
大産油地帯である中東の混乱は原油の供給不安を生み、世界経済に深刻な影響を及ぼす。米、イラン双方と良好な関係にある日本の立場をいかし、緊張の緩和を促す橋渡し役をつとめてほしい。
対立のきっかけは、イラン核合意からの米国の一方的な離脱と、それに伴う経済制裁の再開だ。反発するイランは核合意が定める義務の一部履行をやめた。
核開発の歯止めになってきた合意が崩壊の瀬戸際にあるだけでなく、中東各地で偶発的な衝突が起きかねない状態にある。不測の事態を未然に防がねばならない。
イランの国民には第2次世界大戦からの復興をなし遂げた日本への敬意がある。日本は1979年のイスラム革命後もイランと緊密な関係を維持してきた。
来日したトランプ米大統領は「安倍首相はイラン指導部と密接な関係にあることを承知している」と述べた。日本の仲介に期待を示したのも、こうした歴史の積み重ねがあってこそだ。
6月下旬には大阪で20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれる。イラン情勢打開に向けた外交努力は、議長国・日本の存在感を示す機会にもなるはずだ。
安倍首相はまず、イラン指導部に核合意の維持を訴えてほしい。無用な挑発を避けるよう自制を求め、米国との対話に応じるよう働きかける必要がある。
米国の要求を一方的に伝えるだけでは事態の打開は難しい。イランの主張に耳を傾け、トランプ政権に柔軟な対応を促すことが重要だ。強まる経済制裁の下でイラン国民は苦境にある。原油輸出の再開や貿易の正常化に向けた手立てを考えることも大切だ。
米国とイランの緊張をめぐってはオマーンやスイスも仲介への意欲を示しているとされる。こうした国々と連携し、危機回避へ国際的な機運を高めていきたい。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.