The Danger in the American Presidential Election Policy Debate Can’t Be Concealed

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2020年の米大統領選に向けた政策論争が本格化してきた。再選を目指す与党・共和党のトランプ大統領が出馬を正式に表明し、野党・民主党の大統領候補によるテレビ討論会も始まった。

米国第一の内向きな通商・移民政策を続けるトランプ氏だけでなく、大衆迎合的な医療・環境政策を訴える民主党候補にも首をかしげる。超大国の将来に禍根を残す危うい論戦になりかねない。

「偉大な米国の復活」を掲げて16年の大統領選を制したトランプ氏は、「偉大な米国の継続」を新たなスローガンに据えた。保護貿易や移民制限など、孤立主義の原点に立ち返り、支持基盤の白人や低中所得層を鼓舞する。

大統領の人気取りのために、米国の政策をこれ以上ゆがめるのはやめてほしい。貿易や移民をやり玉に挙げて、モノやヒトの流れを制限すれば、支持者は留飲を下げるかもしれない。だが、米経済の成長は妨げられ、そのツケがいずれ米国民に回ってくる。

環太平洋経済連携協定(TPP)や温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」などからの離脱にとどまらず、多国間の協調体制に背を向け続けるのは困る。外交や安全保障で得点を稼ごうと焦り、北朝鮮の不完全な非核化を容認したり、対立するイランを挑発したりするのも厳に慎むべきだ。

一方の民主党からは20人以上の大統領候補が名乗りを上げ、政権奪取を目指す。中道派のジョー・バイデン前副大統領が先頭を走るが、左派のバーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員らの存在感も増しており、混戦になりそうだ。

問題は左派が掲げる非現実的な公約だ。国民皆保険や公立大学の無償化、「グリーン・ニューディール」と呼ばれる温暖化対策などの実現には、膨大な費用がかかる。にもかかわらず責任ある財源を示しているとは言い難い。

富裕層や大企業を敵視するあまり、行き過ぎた増税や規制を強いれば、米経済の回復そのものを阻害する恐れがある。グーグルやアップルなどを含む米大手IT(情報技術)企業の解体論が浮上しているのも気になるところだ。

米大統領選の行方は、世界に重大な影響を与える。与野党が現実を直視せず、ともに極論に傾くのは憂慮すべき事態だ。米国にとって本当に必要な政策を取り戻す論戦を期待したい。

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