Nuclear Agreement in Crisis: Iran Needs Self-Restraint

 

 

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古代から多彩な王朝が栄え、豊かな文明を育んだイランは、いまなお存在感が大きい。その尊厳を守るためにも、最大限の自制を続けるべきだ。

 イランの核開発をめぐる国際合意が、いよいよ危うくなってきた。米国の一方的な離脱後も順守してきたイランが、少しずつ合意から逸脱し始めた。

 イランの経済は、米国の制裁で苦境にある。今月7日までに改善がなければ、合意の履行停止を広げるとしていた。

 すでに今月に入り低濃縮ウランの貯蔵量が上限を超えた。さらに期限の7日からは、ウランの濃縮度を規制以上の高さにすると予告した。

 原発燃料レベルを超えて濃縮を進めれば、最終的には核兵器の開発につながる。それはイランと世界を破局に近づける。絶対に踏み越えてはならない。

 米トランプ政権は強硬派を抱えており、武力行使の口実になりかねない。イスラエルによる攻撃や、サウジアラビアなどでの核開発の連鎖が広がることも心配される。

 4年前にできたこの合意は、核開発の制限の見返りに、経済制裁を緩める内容だ。米国が昨年の離脱で制裁を再開させたため、イランは生命線である原油輸出などの道が狭まった。

 その経緯から本来、責任を問われるべきはまず米国である。国際的な協調を嫌うトランプ政権の暴走が生み出した危機であり、そのため国際社会もイランへの批判は控えてきた。

 だが、危うい核開発に突き進めば、国際世論の風向きは変わるだろう。脅しや圧力で譲歩を迫るのはトランプ政権のよく使う手段だが、イランが同じように対抗すれば、誰も望まぬ衝突の恐れが一層高まる。

 核合意の残る署名国である英独仏中ロの5カ国は、イランの経済を支え、事態の悪化を防ぐ手立てを急がねばなるまい。

 英独仏は先月、イランが貿易を続けるための新たな組織を稼働させた。だが、その効果は十分とはいえない。今月はさらに関係国の閣僚級会合が開かれることが決まっている。

 いまのところ、イランも欧州も核合意を維持したい立場では一致している。中東の不安定化は世界にとっての脅威であり、欧州だけでなく、中国とロシアも協調を強めるべきだ。

 イランのロハニ大統領が「必要なだけ濃縮を高める」と表明すると、トランプ氏は「手痛いしっぺ返しをくらうだろう」と応じ、緊張が高まっている。

 先月イランを訪ねた安倍首相も、懸念の表明だけではすまされない。米国、イラン、欧州などと緊密に意思の疎通を図り、緊張の緩和をめざすべきだ。

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