新任のエスパー米国防長官が来日し、安倍晋三首相や岩屋毅防衛相らとの会談で、日米両国が強固な同盟関係にあることを確認した。
首相は「同盟の絆はかつてないほど強固だ。同盟の抑止力、対処力を強化する」と伝えた。
強固な日米同盟の姿を内外に示すことは、日本の安全保障はもとより、インド太平洋地域や世界の平和と安定のため意義がある。
ただし、「強固な絆」が看板倒れにならないよう、同盟の内実を保つ努力を重ねることが欠かせない。中国や朝鮮半島、台湾、ロシアの動向を見れば、日本をとりまく安全保障環境は厳しい。
今、日米同盟には調整が必要な課題がいくつも生まれている。
まず、北朝鮮対応だ。エスパー長官は日本側と、北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射などを協議し、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」を目指すことを確認した。これは評価できるが、トランプ米大統領は短距離弾道ミサイル発射を依然として許容している。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新問題も解決していない。
米国が呼びかけている、中東・ホルムズ海峡などでタンカー護衛に当たる「有志連合」構想参加問題も進展はなかった。日本側は「総合的に検討する」と伝えるにとどまった。
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トランプ大統領の「自分の船は自分で守れ」という問題提起から目を背けては、信頼できる同盟国とは見なされまい。そうなれば、日本周辺における同盟の運用にもマイナスの影響があろう。
日本は原油調達の8割を中東に依存している。タンカー護衛の問題は、日本が自らのため行動する国かを問うている。日本は「自由で開かれたインド太平洋」を目指しているが、日本経済の生命線であるホルムズ海峡やペルシャ湾がインド洋の付属海であることを忘れてはならない。
中国に対する姿勢には、日米でかなり温度差がある。米中貿易摩擦は米国の安全保障上の懸念によるところが大きい。一方、日本政府は「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と強調している。折しも中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した。対中核抑止の態勢をどうするかも含め、日米は対中戦略のすり合わせが必要だ。
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