Guns Are, But Flowers Are Not: Standards for Determining ‘Essential Business’ in the US

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銃はOK でも花はダメ? 非常事態のアメリカで営業が認められる「必要不可欠」の基準とは!?

「生活に必要不可欠な仕事」とは?

日本でも7日、緊急事態宣言が発令され、国民に不要不急な外出の自粛が呼びかけられた。これに伴い、屋内の運動施設や遊技場、劇場や映画館、高級クラブなど接客中心の飲食店などが休業要請の対象となっている。

新型コロナウイルスの感染拡大により外出禁止が続くアメリカでは、営業が認められるのは「生活に必要不可欠な」ビジネスだけだ。日々の食料を調達するスーパー、いざという時の病院・警察などなど、「日常生活に欠かせない仕事」を挙げればきりがない。自分の場合はそこに「書店」と「居酒屋」が加わるだろうか。どちらも自分にとっては、仕事を忘れひと時の楽しみを得る「生活に欠かせないもの」だった。だが当然今はそれどころではない。家の外に出るだけでも一大決心が必要だ。アメリカでの外出禁止生活も、もうすぐ3週間が経とうとしている。

全米で続く「外出禁止令」

3月19日、州として初めてカリフォルニアで「外出禁止令」が出されて以降、同様の動きはニューヨークなど全米に広がり、今やほとんどの州で同種の措置が取られている。人々の生活は1ヵ月前には想像も出来なかったほど一変してしまった。

「外出禁止令」では主に「営業を続けていいビジネスとダメなビジネス」が決められている。そしてこれらの判断基準となっているのが「生活に必要不可欠かどうか」ということだ。

例:カリフォルニア州の場合

「営業が認められるビジネス」=「生活に必要不可欠なビジネス」

●スーパー、薬局

●ガソリンスタンド、コインランドリー、クリーニング

●警察・消防・行政機関

●鉄道・バス

●報道機関

●レストランやカフェ(持ち帰りか配達のみ)     

など

「営業が禁止されているビジネス」=「生活に必要不可欠ではないビジネス」

●レストランの店内営業

●バーやナイトクラブ

●ジム

●劇場や映画館     

など

従わなければ罰則も

アメリカの外出禁止令には法的拘束力があり、従わなければ罰則を科されることがある。ロサンゼルス周辺でも、立ち入り禁止となったビーチで遊んでいたサーファーに1000ドルの罰金が科されたほか、度重なる警告を無視して営業を続けていたタバコ店や靴店などが摘発された。しかしどうしても疑問に思うのは「必要不可欠かどうかの基準は何なのか」ということだ。先に紹介したスーパー、薬局、警察消防といったものは全米ほぼ共通で「必要不可欠」とされるオーソドックスなものばかりだが、実は「必要不可欠かどうか」は地域によって判断が分かれる上、ルール上にはっきり明記されていない業種もあり、しばしば混乱を招いている。

銃は「必要」で花は「不要」?

コロナウィルスの感染拡大に伴い、全米で「銃」の販売数が急増している。購入時に行われる身元照会の件数が3月はおよそ370万件にものぼった。

こうした銃の販売店について、カリフォルニア州の外出禁止令には「必要不可欠かどうか」=「営業を続けていいのかどうか」が明記されていない。そのため、外出禁止令が出た後も銃の販売店は営業を続け、大勢の客が押し寄せた。ロサンゼルス近郊にある店に話を聞くと、「これまで1日数組ほどだった客の数が、感染拡大後には多い日で60組以上も訪れるようになった」という。そもそも外出禁止令の目的は「人と人が接する機会を減らすこと」であるから、それが全く守られていないばかりか、「狭い室内に人が密集する」危険な状況となってしまった。これには地元警察も「銃は必要不可欠ではない」として銃の販売店を取り締まると表明したのだが、すぐにNRA=全米ライフル協会などが猛反発。裁判沙汰となった挙句、結局、銃の販売は認められることとなった。

アメリカらしいといえばそれまでだが、先述の店のオーナーに聞くとやはり「銃は必要不可欠なものだ」と話す。そして「訪れる客は皆、今後の治安の悪化を懸念する人たちばかりだ」という。オーナーは「銃がなかったらどうやって身を守るんだ?武装するのは法に定められた権利だ」として店内に入る客の数を制限するなど対策を取った上で営業を続けていくと強調した。

参考:地域によっては営業が許可されたものの一例 

●大麻の販売店:カリフォルニア州

●ゴルフコース:ミズーリ州(人と人の距離を保つことが条件)

●ヘアサロンやネイルサロン:アリゾナ州 ※批判を受けその後禁止に

●芝生のメンテナンス業:ジョージア州

●質店:ネバダ州

混乱を招いた例は他にもある。東海岸・ニューハンプシャー州では「必要不可欠なもの」として「生花店」の営業が認められている。州の担当者が地元テレビ局に話したところでは「花は葬儀場に欠かせないから」だという。

一方、カリフォルニア州では、生花店については銃と同じく「営業していいのかどうか」が明記されていない。

カリフォルニア州北部でおよそ50年続く老舗の生花店でこんなことがあった。この店は外出禁止令が出された後、従業員の3分の2を一時解雇し、配達のみ営業を続けていたのだが、「他の店は休業しているのにおかしい」「住民を危険にさらして無責任だ」などと、メールやSNS上で猛バッシングを受け、営業休止に追い込まれてしまった。

取材に対し店のオーナーは「うちは元々農業生産者のライセンスを持ってやってきた。州の発表で農業は必要不可欠に分類されたから問題ないはずだし、そもそもお客さんと接触しないよう安全に配慮して配達していたのに・・」と戸惑いを隠せない。

しかし、こうした事態を受けて地元のヨロ郡が「必要不可欠とされていないビジネスも、配達であれば営業を許可する」という独自の決定を下したことで一転、店はなんとか配達営業を続けられることになった。

外出禁止令の盲点に振り回されてしまったオーナーは「全ての自治体でルールに一貫性があるべきだ」と訴える。

そんなオーナーに「花は必要不可欠なものだと思うか」と尋ねてみると、「もちろんです。花は幸せをもたらし、感情を動かします。花は受け取った人の心をつなげるものなんです」と言って、つい最近「配達する花に添えてほしい」と客から頼まれたという手紙の一文を教えてくれた。

「お母さん、お誕生日おめでとう!せっかくの特別な日に、直接手渡せたら良かったんだけど・・。この花がお母さんの一日を輝かせ、喜びをもたらしてくれることを願っています!」

「必要不可欠」の線引きが事業者の明暗を分ける外出禁止令。感染拡大を止めることが最優先ではあるが、経済面とのバランスを取るのは容易ではない。さらに、制限された生活が長引くほど市民が求める「必要不可欠」の範囲も広がっていく。

緊急事態宣言が出された日本でも、休業要請する施設について国と東京都の事前調整が難航し、発表が10日に先送りされた。大阪は外出自粛効果を見極めた上で判断するとしているほか、神奈川、千葉、埼玉、兵庫、福岡の5県は現時点で要請を見送るとしている。自治体の判断にバラツキが出れば、今後アメリカのような混乱を招く懸念がある。行政は「何が必要不可欠か」難しい判断を迫られている。

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