4月の米雇用統計が歴史的な落ち込みを示した。新型コロナウイルスのまん延で経済活動がほぼ停止し、飲食や小売りを含む主要産業で多くの人々が職を失った。
日本や欧州などの雇用統計も記録的な悪化が見込まれる。米国のみならず世界各国の政策当局が、雇用危機を食い止める万全の対策を講じなければならない。
米国では4月の雇用者数(非農業部門)が前月より2050万人減少し、失業率が前月の4.4%から14.7%まで上昇した。ともに戦後最悪の数字である。
新型コロナの感染拡大に歯止めをかけるには、外出の制限や店舗の休業といった対応が避けられない。その打撃が予想されていたとはいえ、2008年の金融危機後をはるかに超える雇用者数の減少や失業率の上昇は衝撃的だ。
米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率で4.8%減少し、約11年ぶりの大幅なマイナス成長となった。4~6月期はさらに厳しく、40%程度減少するとの予測も出ている。
ここにきて経済活動の一部再開に動く州が増えているものの、個人消費や設備投資などの正常化にはほど遠い。雇用統計もさらなる悪化を覚悟せざるを得まい。
トランプ政権は議会や米連邦準備理事会(FRB)と協力し、失業者の生活支援や企業倒産の回避に全力をあげるべきだ。個人への現金給付や企業向けの融資を含む3兆ドル近くの経済対策を着実に実行するだけでなく、必要な追加支出もためらってはならない。
失業者の大半は一時的に解雇された人々で、経済活動が正常化すれば職場への復帰や再就職が期待できる。コロナ禍で困窮する個人や企業をしっかりと支え、米経済の復元につなげてほしい。
米国の雇用危機が長引けば、世界経済も深刻な打撃を受ける。個人や企業の窮状を救う緊急対策に加え、米経済を回復軌道に戻す景気対策もいずれ必要になろう。
国際通貨基金(IMF)によると、20年の世界の実質GDPは3%減少する見通しだ。迅速で手厚い対策を実行し、雇用危機を封じ込める責任は日欧にもある。
安倍晋三政権は事業規模117兆円の緊急経済対策に盛り込んだ個人や企業の支援策を、できる限り早急に実行すべきだ。同時に家賃を滞納する中小企業や、授業料を払えない学生なども救済できる追加対策の検討を急いでほしい。
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