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米ノンフィクション作家、ハルバースタムは朝鮮戦争を描いた遺作で、米兵の言葉「ダイ・フォー・ア・タイ」を引いている。「引き分けのための死」。それは朝鮮戦争のすべての関係国軍民についてもいえよう▲どんな戦争でも民衆や兵士個々の死は悲惨で理不尽(りふじん)だ。さらにこの戦争は400万といわれる犠牲者を出す3年間の戦禍の末に、戦前とほぼ変わらぬ境界で休戦となる。新たな秩序形成はもちろん、終結すらできなかった戦争だった▲「銃剣の先で南に触れてみたい」。当時の北朝鮮の指導者、金日成(キムイルソン)が南への侵攻を前にソ連のスターリンにもらしていた冒険的野心である。3週間で全土を制圧するもくろみだったが、きょうでその奇襲による開戦から70年がたった▲先年の米朝や南北の首脳会談では、休戦状態にある戦争の終結宣言がなされるのかと注目された。だが、その後は北の非核化の見通しはむしろ遠のき、逆に北による韓国への軍事挑発の緊張状態の中で開戦70年を迎えることになった▲先の連絡事務所爆破の折は、開城(ケソン)や金剛山(クムガンサン)への軍展開などの軍事行動をとると表明した北である。ここにきてそれを保留したのは、例によって和戦両様の顔を使い分けての韓国へのシグナルか。70年間の年季の入った揺さぶりである▲「歴史から見捨てられた戦争」。ハルバースタムの言葉は、もっぱら米国の視点での朝鮮戦争観だった。だが開戦から70年の歳月を経ても平和を生み出せなかった戦争の犠牲者の不幸も表してはいまいか。
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