Don’t Stop Making Rules for Digital Taxation

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巨大IT(情報技術)企業などに対するデジタル課税の国際ルールづくりが難航している。米国が自国企業の負担増に強く反発しているためで、経済協力開発機構(OECD)が目指す年内の最終合意に暗雲が垂れこめてきた。

公平で調和のとれたデジタル課税を導入し、グローバル企業に適正な負担を求めるには、主要国の連携が不可欠だ。自国第一主義の行き過ぎを自制し、国際ルールの策定に協力する責任がある。

OECDはグローバル企業の利益に課税し、売上高の大きさに応じて各国に税収を配分する案を示している。各国はこの案で大筋合意に達したが、米国が新ルールに従うかどうかを企業の選択に委ねるよう求め、骨抜きになりかねないとの懸念が広がっていた。

ルールづくりの停滞にいら立つ欧州では、フランスや英国などが独自のデジタル税の導入・検討に動く。米国はこれに不満を表明し、デジタル課税の国際交渉を打ち切ると欧州勢に通告した。

米国は新型コロナウイルス危機への対応を優先する時だと主張しているらしいが、額面通りに受け取ることはできない。欧州勢に揺さぶりをかけ、デジタル税の撤回を迫りたいのが本音だろう。

米国は欧州だけでなく、インドやブラジルなどが導入・検討するデジタル税も問題視し、制裁措置の発動を視野に入れた調査に着手した。新たな関税合戦の引き金になりかねない危険な行為だ。

まずは米トランプ政権が態度を改める必要がある。巨大IT企業の租税回避は、米国内でも不満が大きい。経済のデジタル化に即した税制の見直しは、米国にとっても避けられない課題だ。

まして危機のさなかに高関税をちらつかせるのは許されない。国際通貨基金(IMF)によると、2020年の世界の実質成長率はマイナス4.9%に沈む見通しだ。企業や投資家の不安をこれ以上あおるのはやめてほしい。

欧州なども独自のデジタル税の導入・検討には慎重であってほしい。自国の都合や米国への反発から恣意的な課税を強行し、グローバル企業を必要以上に混乱させるのは避けなければならない。

主要国は直ちに交渉のテーブルに戻り、国際ルールの最終合意を急がねばならない。米欧の対立でOECDや20カ国・地域(G20)の協議が進まないのならば、日本が事態の打開に尽力すべきだ。

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