US Presidential Debate Unable To Envision a Tomorrow for US

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大統領選討論会 米国の明日が見えぬ

予想以上の泥仕合になったのは嘆かわしい。米大統領選の候補者討論会である。両候補は明日の米国をどう築いていくつもりなのか−。不毛な舌戦からは肝心のことが分からなかった。

 米国は新型コロナウイルスの死者が二十万人を超える。挑戦者である民主党候補のバイデン前副大統領は、トランプ大統領の無策が被害を拡大させたと批判した。

 トランプ氏の納税逃れ報道についても「(報道された)七百五十ドルという連邦所得税の納税額は、学校の教師よりも少ない」と指摘し、納税申告書の公表を迫った。

 民主党の候補者選びの段階で行われたテレビ討論会で、バイデン氏は精彩を欠いた。それだけにトランプ氏との直接対決は大きな関門だったが、全般的には安定感のある話しぶりだった。テレビカメラを見据えて発言し、カメラの向こう側の国民に伝えようという姿勢がうかがえた。

 一方のトランプ氏は総じて防戦を強いられた。コロナ対策では「専門家も『大統領はよくやっている』と称賛している」と自画自賛した。

 納税逃れ報道では「数百万ドルの税金を払った」と反論したが、その証明となる納税申告書の公表については「税務調査が終わり次第公表する」と従来の姿勢を繰り返すだけだった。

 トランプ氏が反撃にでたのは、人種差別デモが一部暴徒化した問題に議論が移った時だ。民主党市長の都市で暴徒化したと民主党の責任を指摘。「バイデン氏は極左集団の言いなりだ」と批判した。

 討論会は混乱を極めた。トランプ氏が再三にわたりバイデン氏の発言を遮ったり、両者が同時に発言したりする場面も多かった。

 トランプ氏は支持率でバイデン氏に後れを取る。討論会での不規則発言やヤジは焦りの表れという印象を与えた。

 非難合戦も激しかった。バイデン氏がトランプ氏に「米国史上最悪の大統領だ」と毒づけば、トランプ氏はバイデン氏を「(中央政界での)四十七年間、何もしてこなかった」と無能呼ばわりした。

 コロナ禍からの脱却、社会分断、国際社会での影響力低下など、米国は多くの課題を抱えている。

 だが、討論会は荒れる一方で、議論が深まることはなかった。十一月三日の投票まで両候補による討論会はまだ二回ある。建設的な議論を重ねてほしい。

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