北は米大統領選を機に転換を
北朝鮮の朝鮮労働党創建75年を祝う軍事パレードに、巨大な大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの新型兵器が登場した。ICBMは迎撃が難しい多弾頭型の可能性があり、日韓両国に加え、米国にとっても脅威が増す。
金正恩委員長は「戦争抑止力を引き続き強化していく」と演説した。2018年の米朝首脳会談で「朝鮮半島の完全非核化に努力する」とした約束に違反する。国際社会への挑発行為だ。
米国を揺さぶり、国内向けには国威発揚と結束につなげる狙いがうかがえる。だが一般市民はやりきれない思いをしているだろう。経済制裁の長期化に、新型コロナウイルスによる打撃と大規模な台風被害が加わる「三重苦」の困難に直面しているからだ。
軍事パレードは金委員長の苦境も映しだした。演説で「私の努力と真心が足りず、人民が苦しい生活から抜けだせていない」とわびるとともに、何度も謝意を示して涙ぐむ場面もあった。経済不振の根本的な原因がどこにあるかは本人もわかっているはずだ。
一般市民が求めているのは、暗闇にライトアップされた劇的な演出やマスゲームへの参加ではない。総動員で経済建設にあたる「80日戦闘」の負担も重い。制裁下で指導部がいくら自力更生の旗を振っても巨費を投じる核開発を続けていては限界がある。
暮らしを良くするためにどうすべきかを考えて実行するのが政治だ。北朝鮮経済を本気で立て直すには地域の安全を脅かす核兵器とミサイルを放棄し、国際社会と手を携える必要がある。
演説では米国への敵対姿勢を控えた。核兵器を念頭に「自らを守ろうとして育んでいるだけだ」とし、特定国を狙ったものではないとも強調した。米国との関係改善に望みをつないでいるためだ。
停滞している米国との非核化交渉に率先して復帰するのが先決だ。11月の米大統領選を北朝鮮が変わる好機とすべきである。
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