超大国のかじ取りを誰が担うのか。世界が注目した米大統領選が実施された。新型コロナウイルスの流行に伴い、郵便投票が大幅に増えた。結果の確定にはかなり時間がかかりそうだ。政治空白が長引くと、米社会の動揺に拍車をかけかねない。不測の事態につながらないことを望みたい。
事前の世論調査では、民主党候補のバイデン前副大統領が全国平均でリードを保ってきた。共和党現職のトランプ大統領も終盤に追い上げ、激戦州とされたフロリダ州やオハイオ州で勝利を確実にした。先行きは不透明だ。
コロナ禍で米経済の先行きが見通せないなかで、いつまでも勝者が決まらないと、金融・証券市場が再び不安定になることが懸念される。日本のマーケットへの波及も警戒が必要だ。
トランプ氏は最終結果の確定を待たずにホワイトハウスで支持者を前に演説し、「すでに勝った」と力説した。さらに法廷闘争を通じて開票作業の打ち切りもあり得るとの考えをほのめかした。開票途中での優位を保つために、民主党票が多いとされる郵便投票を無視することは許されない。
他方、バイデン氏は支持者の集まりで「集計作業が終わるまで、忍耐強く待たなければならない」と呼び掛けた。いずれの候補が勝つにしても、圧勝という形にはならない見通しで、双方が勝利を主張し続ける泥仕合もあり得る。2000年の大統領選は決着に1カ月以上を要した。
このことからうかがえるのは、米国民の分断の深刻さだ。選挙戦では、コロナの感染防止対策や落ち込んだ経済をどう回復させるかが議論となった。だが、少数の激戦州を除くと、共和党が地盤とする州と民主党が優勢な州の色分けはほぼ同じだった。
投票行動を決める際、景気のような変動する要因で支持が揺れ動く従来の選挙と異なり、人種の違いといった変動しない要因によって投票先を決める有権者が増えているようだ。裏返せば、分断はこれからも長く続き、より深まるかもしれない。
こうした超大国の混乱の隙を突いて、東アジアや中東のような地域で、不穏な動きに出る国や国際テロ組織があらわれる可能性もないとはいえない。米大統領選が世界の混乱の引き金を引くのか。なんとか早く無事に決着してもらいたい。
Leave a Reply
You must be logged in to post a comment.